第45話

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2021/07/20 15:02





空を一直線に沈んでいた太陽が、海の奥に消え掛けている。
赤や紫が入り混じり、段々と暗くなってきた砂浜。
太陽の光を反射してキラキラと揺らめく水面の光。
神秘的な光景に、私は思わず「きれい……」と声に出してしまっていた。
隣に座っているジャミルくんはクスリと一つ笑ってから「そうですね」と返事を返す。
そんなジャミルくんへと視線を移せば、その彫り深く整った顔が、日の光に照らされ陰陽をクッキリと写していた。

そんなジャミルくんも綺麗だと、心の中で呟き微笑む。
同じ景色を見てキラキラと目を輝かせているジャミルくんが可愛らしくて、鞄からスマホを取り出しパシャリと横顔を1枚盗撮した。
そんな盗撮とも言えないバレバレな撮影に、ジャミルくんは「やめてください!」と怒りながらスマホのカメラを手で覆った。
ごめんって、と苦笑しながらスマホを仕舞えば、ジャミルくんはムッとしながら此方を見ていた。
スマホはもう無いよ、と両手をヒラヒラして見せつければ、ようやっと安堵した様に息を吐く。
ジャミルくん、写真は苦手なのかな。今度からは許可を取らなければと反省しつつ、私はそっとその場を立ち上がった。
鏡宵 (なまえ)
鏡宵 あなた
ね、そろそろ帰ろっか。
周りも暗くなって来たし、結構な時間海に居たもんね。
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
そうですね。今日は楽しかったです、海デート……でしたっけ?
鏡宵 (なまえ)
鏡宵 あなた
その事はもういいでしょ……
「海デート」という言葉を使って揶揄ってくるジャミルくんに苦笑しながら、私はスニーカーで砂を蹴りながら車に向けて歩き出す。
後ろから聞こえるザク、ザク、という足音に耳を澄ませながら、私はクルリと振り返ってジャミルくんに声を掛けた。

…___筈だった。
「ねぇ、ジャミルくん」と言い掛けた言葉は途中で止まり、そこには私の呼吸音だけが響いている。
大きな波の音さえ聞こえないくらい、私は無の空間に閉じ込められる様な感覚に陥った。
伸ばした手は空を切り、冷たい風だけが私の手を冷やす。

そこに、ジャミルくんの姿は見えなかった。
鏡宵 (なまえ)
鏡宵 あなた
ジャミル、くん……?
涙が零れそうな程潤み、霞んだ瞳のまま、彼が居たはずの場所へと声をかけた。
瞬間、パチンと弾かれた様にして私の意識は元に戻り、目の前には「あなたさん?」と首を傾げているジャミルくんの姿が見えた。
その姿と声で、溜まっていた涙が一気に落ちていく。
ジャミルくんは、私が泣き出した所為かワタワタと焦り、その長く骨張った指で必死に私の涙を拭ってくれていた。

依存しすぎだって分かっているんだけど。
いつか帰さなきゃならないって、分かっているんだけど。
どうしても離してあげられそうに無くて、自分の惨めさに自己嫌悪が段々と募っていく。
行かないで、なんて汚い感情を込めて、涙を拭ってくれているジャミルくんの手を、ギュッと両手で握りしめた。
驚いているジャミルくんの背景は、怯えてしまうほど美しく、まるで異世界の様な"彼そ誰時"だった。












:彼そ誰時(黄昏時)

「彼そ誰」には「そこにいるのは誰ですか」という意味が込められている。
彼そ誰時は「この世(日本)」と「あの世(異世界)」が交わる時とも言われている。





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これ、意味分かるかな……?






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