それ以降、俺は気にしないよう努めた。
毎週土曜日店のキッチンに入った時、手伝いに集中するよう心がけて、カランカランという音が鳴っても視線を上げることはしなかった。
バレンタインデーが近づくにつれ、仕込みの量も増えていった。
親父はてんてこ舞いになってたけど、俺としては忙しいくらいでよかった。
余計なことを考えて済む。
生クリームを泡立てたり、生チョコをカットしたり、ケーキの生地を作っている時間だけは無心になれた。
例えあの子が来たとしても……関係ない。
今までは……ちょっと期待してたけど、そうじゃないとわかった。
それなら……もういいんだ。
そんなこんなでバレンタインデー当日。
日曜日だけど、この日は朝から手伝いをした。
「すぐる。本当に悪いな。助かるよ」
「いーよ。どうせ予定ないし」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。