第13話

13❄️
365
2018/02/05 03:21

冷たい風が頬を突き抜けていく。

数人の子どもが楽しげな声を上げながら俺を追い抜かしていった。

見上げると、オレンジ色の空が広がっていた。

どこを見てもオレンジ色に染まった幻想的な景色を眺めながら、これまでのことを思い出す。

土曜日、彼女が店に来るのを毎週楽しみにしていた。

お客が来るたびに顔を上げて毎回確認した。

彼女が来ると、どうしようも落ち着かない気持ちになった。

その澄んだ瞳がこちらに向けられた時、あぁ笑ってほしいと願った。

名前も知らないし、どこの学校に通っているのかも知らなかった。

それでも、1週間に一度店へ来て笑いかけてくれるだけで、見知った関係になれた気がしていた。

あの子が俺を好きだったらいいのにーー

もちろん夢のまた夢だとわかっていた。

それが改めて確認できた。

それだけの話だ。

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