冷たい風が頬を突き抜けていく。
数人の子どもが楽しげな声を上げながら俺を追い抜かしていった。
見上げると、オレンジ色の空が広がっていた。
どこを見てもオレンジ色に染まった幻想的な景色を眺めながら、これまでのことを思い出す。
土曜日、彼女が店に来るのを毎週楽しみにしていた。
お客が来るたびに顔を上げて毎回確認した。
彼女が来ると、どうしようも落ち着かない気持ちになった。
その澄んだ瞳がこちらに向けられた時、あぁ笑ってほしいと願った。
名前も知らないし、どこの学校に通っているのかも知らなかった。
それでも、1週間に一度店へ来て笑いかけてくれるだけで、見知った関係になれた気がしていた。
あの子が俺を好きだったらいいのにーー
もちろん夢のまた夢だとわかっていた。
それが改めて確認できた。
それだけの話だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。