「お店に買いに来たんじゃ……」
「いえ……実は作ってたんです。お店に来た理由は……その……バレンタインデーだから日曜でもあなたがいるかなって思って、あ、もちろんチョコも買うつもりでしたよ。自分用にですけど」
そう言うと女の子は笑った。
絵に描いたような美しい笑顔に癒されていく。
「そうだったんだ」
「はい。チョコ……渡したいなって思ってて、けれど、自信なくて……お店に行った時、あなたと話せてすごく嬉しかった。それに……手作りのほうが喜ぶって言ってくれて、だから、勇気出して持ってきました」
ーー……
君のチョコがほしいな、なんて何度願ったっけ。
叶わない夢だと思っていた。
けど、信じられないことに現実となった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。