「え、でも俺説明とか……できないし」
「笑顔があればそれでじゅうぶん。頼んだわよ。イケメン君」
息子にイケメンって……。
「うぅ、わかったよ」
渋々キッチンから店へ出ていった。
よ、よし……。
まず相手がどれ買うか訊けばいいんだよな。
カランカラン。
また1人お客が入ってきた。
まずは笑顔で挨拶だ。
「いらっしゃま……っ」
え……ーー
心臓が飛び出すかと思った。
それはあの子だった。
向こうも俺に気づいたようで小さく微笑んだ。
いつもは髪をおろしている。
けど、今日は違って、緩くみつ編みしていた。
距離にして1メートル。
間近で見るのは初めてだった。
ドッドっと心臓が強く打ち付ける。
以前彼女が男と歩いていた景色が蘇る。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!