「あ、ありがとうございます」
「いつも……お店手伝ってるんですね」
あ……やっぱり俺のこと見ててくれたんだ……それだけでも嬉しいかな。
「いえ、土曜日だけです。親父の店だしそれくらいはと思って」
「それでもじゅうぶんすごいと思います。……生チョコ……あなたが作ったんですか?」
「僕は手伝いだけです。いつかは作ってみたいなとは思ってますけど、まだそんな」
「そうなんですか」
向こうから話しかけられると思っていなかった。
彼氏がいるとわかっていても素直に嬉しかった。
だから、俺もつい訊いてしまった。
「あの……自分で作ったりしないんですか?」
「え」
「いや、その……今買ったチョコ……大切な人にあげるのかなって思ったから」
我ながら変なことを言ったと後悔して、視線を逸らした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!