1時間後、生チョコは完売した。
くそぉ……食いたかったなぁ。
ガックリと肩を落としていると親父がやってきた。
「すぐる、お疲れ。今日は本当に助かったよ。ありがとう」
「……俺も生チョコ食べたかった」
「また作ってやるから。で、お前は貰ったのか?」
「はぁ? こんだけ働かせておいて何言ってんだよ」
「はははっ、悪い悪い。今度なんか買ってやるからな」
「子どもじゃねぇんだから」
「わかってるよ。とにかく今日はお疲れ。ちょっと休憩してこい」
ポンと肩を叩かれて、なんとなく力が抜けた気がした。
「あー、うん。じゃあ……適当にぶらっとしてくる」
エプロンを外すと上着を羽織って店を出た。
時刻は午後4時時過ぎ。
夕焼け空の下、河川敷沿いをただぼうっとしながら歩いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!