第14話

人の不幸を笑う男
468
2018/04/30 05:20
「前にも俺に、そんなこと言ったよな」
「っ…」
蛇にでも睨まれたような感覚に、俺は思わず息を飲む。

俺の口を塞ぐ如月の目には、悪魔の笑みはなく、それどころか、どこか苛立っているように感じられた。
「性癖ってもんかわからねぇが…俺はな、今お前を泣かせたいんだよ」
「??」
「お前のことなんか好きでもねぇし、心底どうでもいい。でもな、その仮面の裏の表情を、俺はとっても見てぇんだよ。無愛想なお前の絶望する姿、震える姿、怯える姿、泣く姿…そのポーカーフェイスを剥ぎたくてしょうがねぇ」
ドSな男。話を聞くだけなら、普通の人間はそう思うのだろう…だが、今如月の顔を見れば、そんな思い込みは覆される。

今この変態は、頬を赤く染め、呼吸を荒くし、怪しい笑みを浮かべ、欲情している。
「会った瞬間、お前が下のことはわかっていた。同じ部屋になってから普段の生活を共にしたが…それは確信にしか繋がんなかったんだよ」
如月へのメリット──それは、自分の欲を満たすため。俺の哀しむ様を見るってことが…信じたくないが、こいつの目的のようなことなのだろう。

自分なりに解釈し、この後どうするかを考える。と、そのとき。塞がれた口が自由になり、その上縛られていた手足まで動かせるようになった。
「えっ──」
「動くな」
自由になった手足を動かそうとすると、一瞬息ができなくなり、体か固まった。それが唇を塞がれたのだと理解したのは、口の中をかき混ぜられてからだ。
「ふっ、んん、っ!」
唇を離そうと如月を押し返そうとするものの、体に電気が走ったような感覚に力が上手くはいらない。
「ぷはっ!はぁ…はぁ…」
「見た目と性格変えても、トロけた顔は同じだな」
唇には銀の糸がひいている。そしてそれを舐めとった如月が、何かを言っている。なのに…体が熱くて、なにも考えられない。
「薬の効果ってすごいね。飲まされたのわかった?」
「くす、り…?」
「媚薬だよ、媚薬。見てよ。興奮してる証拠に、ココこんな腫れてる」
「えっ…ひゃっ!」
反り勃った熱の裏側を、如月がツーっとなぞりあげる。
「いやっ…やめ──」
「こんなにしちゃって…悪い子だね、先輩」
「っ…」
「''僕''がちゃんと、責任とってあげます」

プリ小説オーディオドラマ