第12話

地獄の繰り返し
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2018/04/23 06:17
「く、来るな…」
「えぇ?せっかく僕の友達来てくれたんですから、おもてなしくらいしてくださいよ」
「は?友達?」
「はい。同じ学部の仲間です」
人が怖い…人の目が怖い…否、この三日月のような、飢えた獣のような目が怖い。

如月と数人の──いや、二人の男は、腰が抜けながらも後ろに進む俺に、ゆっくり迫ってきた。
「言っておきますけど、こいつらはゲイじゃないですよ」
「え、それって、どういう…」
「恋愛対象は女なんですけど、犯したい相手は男…いや、''新田 雄作''なんですよ」
「は、はぁ?」
わけがわからない。性行為は元々愛のある行為であり、快楽なんて二の次だ。
「わけがわからない!なんで俺なんだよ!?」
すると如月は白い歯を見せて笑い、しゃがんで俺の顎に手を添えて言った。
「ノンケの男をすら、あんたには惚れちまうってことだよ」
「!?」
「恋愛対象にまでは至らずとも、男はお前に惹かれちまう。フェロモンかなんかあんのかもしれねぇが、お前はそういう男なんだよ」
つまり、大学で俺がゲイだと知れ渡ったら、生徒が''離れていく''のではなく…一部の男を引き寄せることになるのか?

さっきまでの余裕はとっくに消えていたが、今この状況をもって、俺は如月に反抗できなくなった。
「自分でも理解できたか?エロビッチ。大学内に雄作ゲイ説ばらまいたら、高校時代を繰り返すことになんだよ」
さっきから如月の口調が違うことなんて、今の俺にはどうでもいい。それに襲われても、今の俺には反抗する力はある。

…でも、保野は──
「そんな泣きそうな顔になんなって。こいつらがこれから、めいいっぱい慰めてくれるからさ」
「え、やめっ──」
顎を強く捕まれたかと思うと、如月の顔が近づいてきて口で息ができなくなった。その上、得体の知れない液体を飲まされた。
「っ、ゲホッ!おえっ」
「そんな、吐いちゃダメだよ?ちゃんと飲まないとね…」
「お前っ、俺に何飲ませてっ──あ…」
いきなり激しい目眩がして、俺は床に倒れ込んでしまった。
「効果覿面だ。ほら、好きにしていいよ」
「ありがとよ、如月」
気を失う前に、そんな会話が聞こえた気がした。

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