第4話

🐱
1,301
2022/09/17 05:55
⚠嘔吐表現あり。苦手な方はご注意を。
学校の昼休み。
琥太郎は外のベンチで友達と昼食を食べていた。
モブ
ん?あれ、葵先輩じゃね?
一緒に昼飯を食べていた友達が指さす方向を見ると、
近くの木陰で座り込む葵の姿があった。
琥太郎と葵は数ヶ月前から付き合っており、体を重ねたこともある。関係は数ヶ月経った今でも良好だった。
琥太郎
ほんとだ。…あんなとこでなにしてんだ…、
モブ
っていうか聞いたか?葵先輩、今回のテストもまたトップだったらしいぞ。
琥太郎
…そうなんだ。
もちろん知らないわけがなかったが、
めんどくさいことを避けるために知らないフリをした。
モブ
あ!やべ!
突然琥太郎の隣に座っていた友達が大声をだす。
琥太郎
どうした?
モブ
俺、昼休み先生に呼ばれてるの忘れてた!
わりぃ、行ってくる!
琥太郎
おー、頑張ってこいよ。
琥太郎の言葉に親指を立てて笑顔を見せた男は走って校舎内に戻って行った。
琥太郎
…さてと、
琥太郎は弁当をしまって立ち上がると葵のそばに
早足で向かった。
琥太郎
…葵先輩、
葵
…ん…?あぁ、琥太郎か。どうした
三角座りでぼーっとしていた葵が顔を上げる。
その顔は病人かのように真っ青で、冷や汗が滲んでいた。
琥太郎
…どうした、じゃないよ。顔真っ青じゃん。
葵
…そんなこと…ぁ、
琥太郎は言葉の途中、葵を背中におぶると立ち上がった。
琥太郎
保健室?トイレ?
葵
……トイレ。
琥太郎
りょーかい。
琥太郎は葵を背負ったまま1階のトイレへと向かった。
幸いなことに生徒や先生にその姿を見られることは無かった。
琥太郎
…ん。着いたよ、先輩。
葵
ん"ッ、ぇ"っ…げほっ、…、
トイレに着いた時には葵の顔色はさらに悪くなっており、
呼吸も酷く乱れていた。
葵
ぁ"ッ、きもち、わるいっ…
琥太郎
ん。吐いちゃいな、楽になるんじゃない?
琥太郎は葵の背中をポンポンとさすってやる。
葵は吐きそうになって便器に顔を近づけるが、
喉がひくつくだけで口から吐き出すことは無かった。
葵
ぅ"ッ、吐け、ないッ…、
琥太郎
そりゃつらいでしょ。
…じゃあ、ちょっと我慢してね。
琥太郎は葵の顔を優しく掴むと、
もう片方の手を葵の口の中に突っ込んだ。


そして、喉の奥の柔らかいところを刺激する。
葵
う"ッ…ぇ"っ…、お"ッ、…ぇ"っ、ぇッ、
葵の舌が痙攣しだしたと思えば、ベチャベチャと嘔吐した。
…葵がこんなふうになってしまうのは今に始まったことではなかった。琥太郎と出会う何年も前からずっとこんな調子らしい。


原因は分かりきっている。オーバードーズだ。


オーバードーズとは多幸感を得て精神的な苦痛から逃れようと、医師が処方した薬やドラッグストアで買えるせき止め薬などを大量に摂取することだ。


葵がオーバードーズがやめられない理由までは深く語らないが、簡潔に言ってしまえば強いストレスからくるものだった。
琥太郎も理由や原因は知っているが、
葵のオーバードーズを止めようとはしなかった。


その代わり、今回のようにオーバードーズによって起こる体調不良の看護をしているのだ。
葵
はぁッ…、はッ…ぇ"ッ、げほッ、ぉ"ッ、ぇ"ッえ…、
ボロボロと涙を流しながら嘔吐する葵の姿を見ると、
琥太郎は葵の体を抱き寄せる。
葵
…こた、ろッ…、
琥太郎
ん?どーしたの。
葵
…………、
葵は琥太郎の肩に頭を寄せる。
琥太郎
よしよし〜、頑張ったね、先輩。
…水あるけど、口の中洗える?
葵
…う、んッ…、
琥太郎から水を受け取った葵は、
ドロドロになった口を水でゆすいだ。
琥太郎
どうする?早退する?
葵
いや…放課後に生徒会の仕事あるから…。
俯きながらそう言う葵に琥太郎が心配の表情を見せる。
琥太郎
…無理しすぎじゃない?
体調不良なんだから休んでもいいと思うけど。
葵
…迷惑、かかるだろ。
琥太郎
…そう?
まぁ先輩が行きたいなら止めはしないけどね。
生徒会、何時ごろ終わる予定?
葵
18時くらいだと思う
琥太郎
分かった。終わったら連絡して?
一緒に帰ろ?
琥太郎がそう言って笑いかけると
葵は安心したような顔を浮かべた。
葵
わかった。…ありがとう。
琥太郎
よし、じゃあそろそろ教室戻りますか。
…立ち上がれる?
葵
あぁ、…ッと、
葵は壁に手をついて立ち上がったが、すぐによろけてしまう。
琥太郎
ねぇ、やっぱり保健室に…
葵
大丈夫だよ、心配症だな。
立ち上がって琥太郎にそう言う葵の顔は
"学校一の優等生"の顔に戻っていた。


先程まで見せていた"本当の葵"の顔がまるで嘘のよう。
2人でトイレから出ると、
同じ生徒会に所属している1年が葵に駆け寄ってくる。
モブ
先輩!すみません、この資料なんですけど…
葵
どれ?
モブ
先輩しか頼れる人が居なくてッ…
1年が葵に資料を見せると、
葵は少しだけ顔を険しくしたが、またすぐに笑顔を作った。
葵
分かった。
俺が何とかしとくからもう教室戻りな。
モブ
本当ですか…!ありがとうございます!


琥太郎
…本当に大丈夫?それ。
葵
…あんな頼まれ方したら断れないだろ。
葵が困ったような笑顔を琥太郎に向けると、
琥太郎は葵の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
琥太郎
…無理しないでね。
俺の事、いつでも頼っていいから。
葵
分かってるよ。ありがとな。
…じゃ、教室戻る。
琥太郎
うん、バイバイ。
葵は軽くてを振り返すと、
琥太郎に背中を向けて階段を上っていった。
琥太郎はやけに伸びている葵の背筋を見届けたあと、
自分の教室に向かうのだった。

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