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第11話

ショムちゃんとピンチ
 スマートフォンの画面に表示される『未読メッセージがあります』の通知に、気まずい思いを抱えつつも知らんぷりを決め込む。

 宇多川先輩のパシリの要請に応答しなくなって、今日で三日が過ぎようとしていた。
蘭子
蘭子
……
 罪悪感がないと言ったら、嘘になるけど。
蘭子
蘭子
(それでも、私は生徒会だから)
 ずきんと痛んだ胸を押さえ、私は自分の気持ちを正当化する。
蘭子
蘭子
(しかもバイクの修理代は400円だったし!)
 私はスマートフォンをブレザーのポケットにしまい込むと、学生鞄を手に自分の席から立ち上がった。



 *   *   *



 雲母坂高校ではテスト期間が近付き、放課後の課外活動が停止となった。
 生徒会もこの期間は活動がストップしているため、放課後の見回りも、駐輪場の整理(本当はもう二度としたくない)も、実施する必要はなくて。
蘭子
蘭子
(……たまにはちゃんと家で勉強しよう)
 特に用事のない私は、まっすぐ家へ帰ることした。


 冷たく吹きすさぶ北風に身震いをしながら、一人で通学路を歩く。
 気を抜くとつい頭の中に浮かんでしまうのは、宇田川先輩の存在。

蘭子
蘭子
(ああもう、なんで思い出しちゃうかな)
 距離を取ろう、連絡を取らないようにしようと意識すればするほど、彼のことを考えてしまっている自分がいる。

 結局それは、宇田川先輩に振り回されている事実に変わりなくてーー
蘭子
蘭子
(何だか悔しいんだけど!)
 むっとして頬を膨らませた、その時。
男子生徒
男子生徒
雑魚に用はねぇんだよ
蘭子
蘭子
 突然近くでドスのきいた声が聞こえ、私は驚いて辺りを見回した。

 付近には、人気のない公園。

 見れば複数の学ラン姿の青年が、一人の男子高校生を取り囲むように立っている。
 自分と同じ学校の制服を着た男子高校生は、地面に倒れていて――
蘭子
蘭子
(あっ……!)
 目を凝らすと、彼は口元から出血しているように見えた。
蘭子
蘭子
(……生徒会の人間なら、どうすべきか)
 混乱の中で思い出した言葉は、『悩んだら、逃げろ』。
蘭子
蘭子
(でも――)
 脳内に、雨の日の記憶がリフレインする。
 あの時差し出された一本の折り畳み傘が、私の心に晴れ間をもたらしたのだ。
蘭子
蘭子
(……もし自分が、生徒会長なら)
 次の瞬間、私は集団の元へ駆け出していた。


蘭子
蘭子
ちょっと! やめて下さい!
 地面に転がされる生徒の前に、私はありったけの勇気を振り絞って立ちはだかる。
男子生徒
男子生徒
あ?
 突然の部外者の乱入に、取り囲んでいた連中が怪訝な表情を浮かべた。
蘭子
蘭子
(この辺で学ランの高校――そうだ)
 同じ学区内にある、不良が多いことで有名な公立高校が思い浮かぶ。
男子生徒
男子生徒
何だお前
蘭子
蘭子
私……私は……生徒会です!
 呆気に取られていた面々の中から、やがて「ああ」と一人が声を上げた。
男子生徒
男子生徒
お前、そう言えば宇田川世那と一緒にいただろ。二人でデートしてっとこ、見たことあるぜ
蘭子
蘭子
男子生徒
男子生徒
貧相な身体してよくあいつの女になれたな
蘭子
蘭子
(痛……!)
 金髪の青年がにやにやしながら私の腕を掴む。

 咄嗟に振りほどこうとするものの、彼の指はめりめりと私の腕に食い込んだ。
男子生徒
男子生徒
俺達宇田川世那に用があんだよ。キプリウスに果たし状送りつけたと思ったら、こんな雑魚が来やがって
 舌打ちと共に、彼は地面に転がる男子生徒を靴先で蹴る。
男子生徒
男子生徒
教えろ。宇田川はどこにいる
蘭子
蘭子
し、知らな――
 せめてもの反抗で睨み付けたものの。

 無意識に震える腕が、恐怖の感情を物語っていた。
蘭子
蘭子
(……ああ、やっぱり)
蘭子
蘭子
(私は誰の役にも立てない『お飾り』なんだ)
 じわり、と視界が滲んだ瞬間――
宇田川
宇田川
キプリウスのボスならここにいるけど
 それはまるで、戦場に吹いた春風のように。

 不意に聞こえた能天気な声に、その場にいた全員が振り返った。