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第5話

ショムちゃんとデート(前編)
 次の日。朝ご飯を食べて洗面台で歯を磨いていると、ドゥルルル、と重苦しい音が換気扇を通って私の耳に届いた。
 何だろうと思って手を動かしていれば、廊下を走って来た母親が驚いた表情で洗面台に飛び込んでくる。
お母さん
お母さん
ちょっと蘭子! 家の前にお友達来てるわよ
蘭子
蘭子
友達?
お母さん
お母さん
バイクに乗ったイケメン! あんた高校で何してるのかと思えば、あんなイケメンと仲良くなってたのね
 はしゃぎ気味の母親をなだめ、私は慌てて用意をして外へ出る。
 黒塗りのバイクにまたがった先輩が「おはよ」と片手を上げた。
蘭子
蘭子
おはようございます……じゃなくて!
蘭子
蘭子
バイクで行くんですか!?
 徒歩圏内に駅ビルもあるし、てっきり歩いて行くのかと思っていた。
 驚く私をよそに、彼は「ほら」とヘルメットを放る。
宇田川
宇田川
天気良いし、ツーリング日和じゃん
蘭子
蘭子
でも、私バイク乗ったことないし……
宇田川
宇田川
大丈夫。後ろ乗って
 彼に言われるまま、私はヘルメットを被るとバイクの後ろに座った。
宇田川
宇田川
俺の腰に腕回して
蘭子
蘭子
えっ……?
宇田川
宇田川
ほーら。加速しちゃうよ
蘭子
蘭子
ひゃっ!
 突然大きくなったエンジン音に驚き、慌てて先輩の腰に腕を回すと彼は「あはは」と笑う。
宇田川
宇田川
そのまま掴んでて。じっとしてれば怖くないから
 そのまま先輩は地面を蹴り、バイクは低音を唸らせて道路を走って行った。



 *   *   *



 通り過ぎる風がヘルメットから覗く先輩の髪を揺らす。
 二人乗りに慣れて来た私は、赤信号で止まっている間に彼に声をかけた。
蘭子
蘭子
そう言えばそのバイク、大福って言うんですか?
宇田川
宇田川
うん。バイク買った店のおっちゃんが大福に似てたから
蘭子
蘭子
……
 返答に窮していると、「ショムちゃんがやらかした傷も直ったんだよ」と先輩はバイクのボディを指先で叩く。
蘭子
蘭子
随分早かったですね。修理に出したんですか?
宇田川
宇田川
ううん、ホームセンターで買ったスプレーでしゅーってやって完成
蘭子
蘭子
え?
宇田川
宇田川
え?
蘭子
蘭子
そんなものなんですか?
宇田川
宇田川
だって修理代、400円って言ったじゃん
 初めて出会った日に、先輩が示した『四』という数字が蘇る。
蘭子
蘭子
(『四』って、そう言うこと――!?)
 400円の修理代のカタにパシリをされていた事実に、私は気が遠くなるのを感じた。



 *   *   *



 辿り着いたのは、隣の市にある大きなショッピングモールだった。
 駐輪場にバイクを止め、私達は『すずちゃん』のプレゼントを探すために店内を物色する。
蘭子
蘭子
この口紅なんかどうですか? ティントリップって言って、今女子高生の間で流行ってますよ
宇田川
宇田川
んー、でも化粧品はいっぱい持ってそうだからなあ
蘭子
蘭子
じゃあリードディフューザーとか……家に置いておけば、芳香剤として使えますよ
宇田川
宇田川
あ、そう言うの良いかも
 いくら彼女のプレゼント探しに付き合っているとは言え、なんだかデートみたいだ。
 先輩が雑貨屋の店頭に並べられたあらゆる種類のリードディフューザーに目移りしている間、私は店内に置かれたマフラーに目が行く。
蘭子
蘭子
(かわいい……!)
 柔らかなグレーの色に青いストライプが入る、控えめながらもかわいらしいマフラーだった。思わず鏡の前で首に巻いてみるものの、タグに印字された値段は私のお小遣いでは少し予算オーバーだ。
蘭子
蘭子
(……また機会があったらにしよっと)
 私は諦めるとマフラーをほどき、元の場所に商品を戻した。