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第12話

ショムちゃんと保健室
宇田川
宇田川
キプリウスのボスならここにいるけど
 振り返った先の光景に、私達は言葉を失う。


 宇田川先輩が。
 煙草をくわえて。
 鉄棒の上に座っている。
宇田川
宇田川
まったく、俺のかわいい子達に手え出してくれちゃってさあ
 ぶらぶらと足を揺らしていた先輩が鉄棒から飛び降りると、学ランの青年達はじり、とわずかに後退りをした。
宇田川
宇田川
災難だったね。この一部始終はビデオで撮らせてもらったから
 そう言って、先輩はポケットからスマートフォンを出して見せる。
宇田川
宇田川
今すぐここから立ち去らないと、動画サイトで全国配信しちゃいまーす
男子生徒
男子生徒
……くそっ!
 私の腕を握る手が、あっさりと離されて――
男子生徒
男子生徒
覚えてろよ、キプリウス
 まるで戦隊アニメの敵役のような台詞を吐き捨てながら、不良集団は散り散りになって行った。
蘭子
蘭子
……
 呆然と立ち尽くす私の前に、先輩がすたすたと近付いて来る。
宇田川
宇田川
どーも。ショムちゃん
蘭子
蘭子
……煙草は校則違反です
 辛うじて発した声は、情けなく揺れていて。

 きょとんと首を傾げた先輩は、「ああ」と口から飴を取り出して見せた。
宇田川
宇田川
これ、すずちゃんにもらったやつだけど。食べる?
蘭子
蘭子
ふがっ……!
 無理矢理飴を突っ込まれ、口の中に甘ったるい苺の味が広がる。
 あたふたする私をよそに、先輩はブレザーの袖をまくった。
宇田川
宇田川
それよりも、手貸して。彼のこと運ぶから
蘭子
蘭子
(そうだった!)
 地面に倒れたままになっている生徒の元へ、私は慌てて腰を下ろす。

 救急車を呼ぶほどの怪我ではなさそうだったものの、彼の身体中には殴られ蹴られで付いた生々しい傷跡が残っていた。
蘭子
蘭子
出血してるとこ、とりあえずこれで押さえてください
 持っていたティッシュを手渡すと、男子生徒は顔を歪めながら身体を起こす。
男子生徒
男子生徒
……ごめんなさい、ボス
宇田川
宇田川
謝罪なら後にして。今俺が説教したら、君、多分死ぬから
男子生徒
男子生徒
……
宇田川
宇田川
ショムちゃん、そっちの腕持って
蘭子
蘭子
は、はい
 申し訳なさそうな表情の生徒の腕を肩にまわし、先輩は立ち上がる。
 私は彼らと共に通学路を戻り、高校の保健室へと向かった。



 *   *   *



蘭子
蘭子
……!
 舟をこいだ勢いではっと目が覚め、辺りを見回す。

 廊下の壁に掛けられた時計を見ると、すっかり生徒会の活動がある日と変わらない時刻になっていた。
宇田川
宇田川
お待たせ
 保健室のドアがガラリと開く音と同時に立ち上がる。
蘭子
蘭子
彼、どうでしたか?
宇田川
宇田川
深い傷じゃないから、病院に行く必要はないだろうって。大事をとって今日は担任が車で送るみたいだけど
蘭子
蘭子
そうでしたか……
 良かった、と私は胸を撫で下ろす。
宇田川
宇田川
ショムちゃんも、遅くなって悪かったね
 そう言って先輩はポケットからキーケースを取り出すと、指先でくるくると回した。
宇田川
宇田川
……乗ってく?