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第6話

ショムちゃんとデート(後編)
 結局『すずちゃん』の誕生日プレゼントには金木犀の香りのリードディフューザーとフェイスタオルを選んだ。
 綺麗にラッピングされた紙袋と手に、宇田川先輩は上機嫌だ。
宇田川
宇田川
やっぱりショムちゃんに聞いて良かった。俺一人じゃこんなにイカしたプレゼントは選べなかったな~
蘭子
蘭子
お役に立てたのなら良かったです
 モール内を歩き回った休憩にと並んで座ったベンチで、ホイップクリームがたっぷり盛られたコーヒーのプラカップを手にした先輩は「それにしても」と私の顔を覗き込む。
宇田川
宇田川
君、変わってるね
蘭子
蘭子
な、何がですか?
宇田川
宇田川
いや、案外真剣に選んでくれたなーと思って
 彼女のプレゼントのことか、と私はジュースのカップを手に頷く。
蘭子
蘭子
確かに最初はどうよって思いましたけど……誕生日って一年に一度ですし、例え赤の他人でも喜んでもらえたら私も選び甲斐があるかな、と思って
蘭子
蘭子
それに先輩が一人で選んだら、変なもの選びそうですし
 私の言葉に一瞬きょとんとした表情を浮かべた先輩は、「じゃ、今から渡しに行こうかな」と意気揚々と立ち上がった。
蘭子
蘭子
え!? 今から!?
宇田川
宇田川
うん、ちょっと早いけど。ショムちゃんも一緒に来て
蘭子
蘭子
意味分かんないですよ。そんなの二人きりで渡すべきでしょう
宇田川
宇田川
良いの良いの。君も来たら喜ぶと思うし
 自分の誕生日に彼氏が別の女性を連れて来て喜ぶ彼女がどこにいるか。
 避けきれない修羅場の予感に恐れおののきながら、私は張り切る彼に強引に連れて行かれてしまうのだった。



 *   *   *



 モールを後にしたバイクは、私達が住む市内のとある大きな日本家屋の前で止まった。
蘭子
蘭子
え……えっと……
 いかにも代々続いて来たと言わんばかりの歴史を感じる一軒家だ。躊躇う私をよそに、先輩はずかずかと敷地の中へ入って行く。
宇田川
宇田川
すずちゃん、いるー? 世那だよ~
 縁側のガラス戸を開き、彼が大きな声を上げると家の奥から小さな足音がする。
 『すずちゃん』の正体を知った私は、思わず言葉を失った。
すず
すず
あら世那くん。いらっしゃい。どうしたの?
 自分の祖母と同じ年代くらいの女性が、にこにこと目の前に立っている。
宇田川
宇田川
すずちゃん、来週誕生日でしょ? プレゼント買って来たからもらって
すず
すず
あらまあ、嬉しいわ。とりあえず上がって



 *   *   *



 ちゃぶ台を囲んで、すずさんがお茶を淹れる。
すず
すず
嬉しいわあ。世那くんがガールフレンドを連れて来てくれるなんて
蘭子
蘭子
え、ガールフレンドはすずさんじゃ……
 思わずそう言うと、すずさんは朗らかに笑う。
すず
すず
なに言ってるの。最近の若い子は口が上手いわね
すず
すず
世那くんはね、私が以前交差点の真ん中で立ち往生してしまった時に、助けてくれたの
すず
すず
赤信号になってるのに、まっすぐ走って来てくれてね。私が一人暮らしなもんだから、今はたまに買い物の荷物を運ぶのを手伝ったりしてくれているのよ
蘭子
蘭子
へえ……
宇田川
宇田川
なにその目
 わずかに頬を赤らめ、先輩はそそくさと立ち上がる。
宇田川
宇田川
それよりすずちゃん、二階の雨戸閉めとくからね
すず
すず
ええ、ありがとう
 先輩がいなくなったのを確認してから、すずさんは私に語りかけた。
すず
すず
世那くん、以前話していたわ。小さい頃にお父さんを病気で亡くして、今はお母さんの再婚相手の家で暮らしてるって
蘭子
蘭子
そうなんですか?
すず
すず
ええ。だからちょっとやんちゃなところもあるかもしれないけれど……本当はとっても優しい子なのよ
 すずさんは湯のみのお茶を口に運び、目元を細めてにっこりと笑う。
すず
すず
どうか世那くんをよろしくね
蘭子
蘭子
……
 返す言葉が思いつかず、私は視線を手元に落とす。
 湯のみの中には、まっすぐに立った茶柱が浮かんでいた。