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第15話

ショムちゃんとボスの家(前編)
蘭子
蘭子
(寒い……)
 エントランスのベンチに座った私は、あんまんの入った紙袋を抱え直す。

 放課後に開かれた緊急会議の後で実里がこっそり教えてくれたことは、あろうことか先輩の住むマンションについての情報だった。
実里
実里
この前ね、クラスの男子が話してたの
実里
実里
宇多川先輩が、駅の目の前にあるタワーマンションに入って行くとこを見た、って
蘭子
蘭子
(だからって、わざわざ押しかけるのも問題な気がするけど……)
 それでも停学の真相は、本人からの説明がない限りは納得が行かない。


 どうして彼は、高校からのペナルティを甘んじて受けたのか。

 どうして自分が責められるような嘘をついたのか。


 目の前を通り過ぎる住民は、ちらりと剣呑な視線をこちらへ投げかけながらオートロックのドアを開けて中へ入って行く。


 当然だが待ち人はなかなか現れず――
蘭子
蘭子
(あと五分待って来なかったら、あんまん、二つとも食べちゃおう)
 そう決意した、次の瞬間。 
宇田川
宇田川
蘭子
蘭子
 自動ドアが静かに開き、私服姿の宇田川先輩が目の前に現れた。
宇田川
宇田川
何してんの、ショムちゃん
蘭子
蘭子
先輩こそ、何してるんですか
宇田川
宇田川
俺? 俺は、甘いものでも買いに――
蘭子
蘭子
甘いものならここにあります!
 握りしめた紙袋をすかさず宙に掲げる。

 呆気に取られたように私を見つめていた先輩は、やがて「ぶは」とこらえきれずに笑い出した。
宇田川
宇田川
ほんと相変わらずだね。ショムちゃんは
 そして、くるりと踵を返すと人差し指を上へ向けてこちらへ来るように示した。
宇田川
宇田川
おいで。お茶くらい淹れたげるよ



 *   *   *



 ソファに腰かけ、広々としたリビングをぐるりと見回す。

 建設される時に学校で少し話題になったくらい、先輩が暮らすマンションはモデルルームのように綺麗だった。
蘭子
蘭子
(……綺麗過ぎて、人が住んでるとは思えないくらい)
 確かすずちゃんは、宇田川先輩はお母さんと再婚相手の人と暮らしてるって話してたけど。

 最低限の家具だけで揃えられた室内は、両親はおろか先輩自身ですら実際に住んでいるという実感を湧かせない。
宇田川
宇田川
はいどうぞ
 ずい、と目の前のローテーブルに湯呑を置かれ、私は慌てて頭を下げる。

 魚の漢字がたくさん書かれた、お寿司屋さんでよく見るごつい湯呑。
蘭子
蘭子
(……このチョイスは、きっと先輩のだ)
 あんまんをくわえながら腰を下ろした先輩の隣で、私はおずおずと湯呑に唇を近付けた。