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第13話

ショムちゃんと遠ざかる距離
 久しぶりに先輩のバイクに乗った。
宇田川
宇田川
腕、回していいけど?
蘭子
蘭子
いいです。今日は
宇田川
宇田川
『今日は』って、何それ
 軽く笑って返した先輩に、ちり、と胸がわずかに灼けつくような痛みを覚える。
蘭子
蘭子
(……どきどきしてる音を聞かれたくなかった、なんて言える訳ないけど)
 吹き抜ける冷たい風に飛ばされないように気をつけながら、
 私はぎゅっと背後のグラブバーを掴んだ。



 *   *   *



蘭子
蘭子
すみませんでした。先輩からの連絡、ちゃんと返さなくて
 自宅の前でバイクから降り、私は頭を下げる。

 ヘルメットを外したせいで乱れた髪を整えながら、先輩は「ふうん」と小首を傾げた。
宇田川
宇田川
自覚はあったんだ?
蘭子
蘭子
え?
宇田川
宇田川
おっちょこちょいなショムちゃんのことだから、俺はうっかり見逃してるだけだと思ってたけど?
蘭子
蘭子
あ……
 探るような彼の視線に、思わず口をつぐむ。
蘭子
蘭子
(なんて弁明しよう)
 袋小路に追い詰められたネズミのような心地で頭を巡らせていると――

 彼はふい、と私から目を逸らした。
宇田川
宇田川
いいよ。俺もショムちゃんを危ない目に遭わせたい訳じゃないし
宇田川
宇田川
……それに、今日は悪かった
 初めて見る物憂げな表情に驚いて、私は慌てて言葉を返す。
蘭子
蘭子
そんな、私が自分の意志で出た行動ですし
宇田川
宇田川
危ない目に遭わせたことには変わりないよ
宇田川
宇田川
ほんと、ショムちゃんと言いあいつと言い、どうしてうちの子達は後先考えずに行動に出るんだか
 先輩の言う『あいつ』とは、怪我をした男子生徒のことだ。

 話によると彼は果たし状を受け取ったことを宇田川先輩に報告せず、自分でカタを付けようと単身で乗り込みに行ったそうだった。
蘭子
蘭子
……確かに先輩は『キプリウスのボス』ですけど
蘭子
蘭子
私だって、生徒会として果たすべき大義は果たしたいです
宇田川
宇田川
貧相な身体してよく言うよ
蘭子
蘭子
っ……それは百も承知です!!
 曇らせた表情から一転、いつもの笑顔に戻った彼は「嘘」と、私の頭にぽんと手を乗せる。
宇田川
宇田川
ありがとう。俺の仲間を守ってくれて
 それは、初めて自分の存在が認められたようで――

 その言葉に、不覚にもどきんと胸が高鳴る。
宇田川
宇田川
……また遊ぼーね、ショムちゃん
 頭から手を離すと、彼は再びバイクのハンドルを握る。

 遠ざかって行くエンジン音と先輩の背中を、私はいつまでも見つめていた。