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第16話

ショムちゃんとボスの家(後編)
 ソファに並んで座った私と先輩の間に、気まずい空気が流れる。

 先に沈黙を破ったのは、先輩の方だった。
宇田川
宇田川
まあ、怒られるとは思ってたよね
蘭子
蘭子
私にですか?
宇田川
宇田川
うん。『私』に
 拍子抜けしてしまうほどいつも通りの飄々とした先輩の態度に、今日ばかりはわずかな苛立ちを覚える。
蘭子
蘭子
……どうして庇ったんですか
 想像以上に不機嫌な声が出てしまったが、構わず私は続けた。
蘭子
蘭子
先輩はあの時、責められるようなことは何もしていません
蘭子
蘭子
喧嘩を吹っ掛けて来たのは頃月高校の方じゃないですか
宇田川
宇田川
前々から俺は先生達に目え付けられてたの。キプリウスの名前を使って、悪いこといっぱいして来たでしょ
蘭子
蘭子
悪いことって……
宇田川
宇田川
生徒会のショムちゃんならあえて聞くことでもないと思うけど?
 彼の言葉に、これまでキプリウスが起こして来た事案の数々を思い出す。


 家庭科室での焼肉パーティー未遂事件。

 学校の屋上で打上花火を飛ばして、近所から花火大会だと間違えられて問い合わせの電話が殺到した事件。


 それらはどれも橘先輩を始め、生徒会や教師の頭を悩ませるようなものばかりだったけど――

蘭子
蘭子
でも、今回のこととは関係ないじゃないですか!
 やるせない気持ちをぶつけるように、私は先輩に当たり散らす。
蘭子
蘭子
私、悔しいんです。先輩はいつも一人で抱え込んでしまうことが、散々パシリだなんだって言っておいて、結局私にはなんにも話してくれないことが
宇田川
宇田川
え?
蘭子
蘭子
確かに私は生徒会のお飾りみたいな人間ですけど! 言ってくれれば先生への抗議の一つや二つ、できたかもしれないのに
宇田川
宇田川
ちょっと待って
蘭子
蘭子
待ちません!
宇田川
宇田川
蘭子
 ぐい、と強い力で手首を引かれる。

 その弾みで体勢がぐらりと崩れたかと思うと――
蘭子
蘭子
……!
 気付けば私は、先輩の腕の中にいた。
宇田川
宇田川
……どうして君がそんなに怒ってるの
 あやすような低い声が耳元をかすめ、ささくれ立っていた心が段々と押さえつけられて行く。
宇田川
宇田川
これは、俺とキプリウスの問題だ
宇田川
宇田川
君には関係ないし、それに……前から言ってるでしょ? 君を巻き込みたくはないって
蘭子
蘭子
それでもっ……
 それでも。

 私を置いてどこかへ行って欲しくない。

 先輩が誰かのために、容易く自分を傷つける姿は見たくない。
蘭子
蘭子
(だって、私は……)
蘭子
蘭子
(先輩のことが、好きだから)
 心の中で呟いた言葉が、先輩の耳に届くことはない。

 じわりと目尻から滲んだ涙を誤魔化すように、私は彼の胸元に顔をうずめた。