無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第10話

ショムちゃんと恋煩い
蘭子
蘭子
はああああ……
 昨日の帰り道のことを思い出しただけで、恥ずかしさで顔から火炎放射を噴き出せそうだ。
蘭子
蘭子
(言い訳に大根はさすがにないでしょ)
蘭子
蘭子
(絶対変な奴だと思われたじゃん、私……!)
 ただでさえ常軌を逸した行動で名高い宇田川先輩に変人扱いされるなど、もはや不名誉以外の何者でもない。
 盛大なため息と共に書類の山へ突っ伏した私の隣で、実里が困ったような声を上げた。
実里
実里
ちょっと蘭ちゃん、大丈夫? 疲れてるんならそっちの作業手伝うよ
蘭子
蘭子
ううん、大丈夫だよ
蘭子
蘭子
これは私が橘先輩から任された仕事だし……
 自分に言い聞かせるように呟き、再び黙々とホチキス留めを再開する。
 そんな私を眺めながら、「相変わらずだなあ」と実里は笑った。
実里
実里
蘭ちゃん、会長の言うことは本当にちゃんと聞くもんね
蘭子
蘭子
……別に深い意味はないよ
当たり障りのない返事をしてみるものの、「でもさ」と彼女は身を乗り出した。
実里
実里
そう言えば会長と蘭ちゃんって、中学の時も同じ生徒会で一緒に活動してたんでしょ?
実里
実里
普段私達には見せないだけで、実はすっごい固い絆で結ばれてたりとか!?
蘭子
蘭子
いやいや……流石にそれはないでしょ
実里
実里
そうかなあ? ま、会長は元々一匹狼だもんね
 そう言って実里は再び視線を帳簿へ戻す。
 これ以上詮索されることはなさそうでほっとしつつも、私の頭の中には数年前の光景が蘇った。
女子生徒
女子生徒
井瀬さん、転校する前は海外にいたんだって
女子生徒
女子生徒
へー、何か調子乗ってそう
 できることなら永遠に忘れ去ってしまいたい、苦い記憶だ。
 クラスメイトに傘を隠され、土砂降りの中を走って帰ろうとした私に、橘先輩は無表情で折り畳み傘を差し出した。
橘
限りある時間を、有意義に過ごすか無駄にするかはお前次第だ
橘
少しでも悔しい気持ちがあるのなら……強くなれ。転校生
蘭子
蘭子
(あの時決めたんだ。私は先輩に付いて行くって)
 それでも、と脳内に浮かびかけた後ろ姿を私は首を振って打ち消す。
 いくら下っ端とは言え、私は生徒会のメンバーだ。
 組織のトップに立つ生徒会長に忠誠を近い、校内の安全と平穏を乱す者には正面から立ち向かわなくてはならない。

 例え、それがキプリウスの『ボス』であろうと。
実里
実里
蘭ちゃん? やっぱり、何かぼーっとしてない?
蘭子
蘭子
あ、ごめん!
 不安げにな実里の声で我に返り、私は慌てて作業が完了した書類の束をとんとんとまとめる。
蘭子
蘭子
本当に何でもないから。それより活動終わったらさ、カフェでも寄って帰ろっか
実里
実里
良いの!? やった!
実里
実里
そう言えば飲みたいと思ってた限定ココアがあってね……
 ちくりと痛む気持ちを誤魔化すように、私は無理に作った笑顔を実里へ向けたのだった。