今日は卒業式。天元さん達3年生が卒業する日だ。今の3年生はお世話になった人も多いから尚更悲しい。
この卒業式には、在校生として2年生と、生徒会役員が出席している。私は1年生だが、生徒会長としてステージ上で喋らなくてはならないので出席しているのである。
久しぶりに天元さんがキメツ学園の制服を着た姿を見た。どんな服を着ていても天元さんは派手でオーラがキラキラしていて眩しい。
天元さんは堂々とマイクに向かって答辞を述べていく。会場の人達はシーンと静まり返り、皆が天元さんの話に耳を傾けている。天元さんが喋る姿はどこかハッと目を引くところがあり、つい見とれてしまう。いつ、どこにいても天元さんは天元さんだなぁと思っていると急に名前を呼ばれた。
大勢の人の前で私に対する感謝を述べられ、恥ずかしさで心臓がドキドキしている。感謝なら私の方がしてるのに。天元さんにどれだけ感謝してもしきれないのな私なのに。
そう考えているうちにも天元さんの答辞は先へ進んでいく。
盛大な拍手が起こった。全部で5分半の大スピーチだった。涙が流れそうになった。
でも泣いている暇はない。なぜなら……
天元さんの答辞のあとに私は生徒会長として喋るのだ。原稿は考えてきた。天元さんを始め今までお世話になった先輩方へ。私から言葉を送る。
私は幼稚園の頃からこのキメツ学園にいるが、中等部までの私はどちらかと言うと引っ込み思案な方だった。浮きすぎないように、目立ちすぎないように。それだけを考えて生きてきた。
だけど高校に入ってアオイ達や柱の皆さんに出会ってかまぼこ隊の仲直りして、人と関わることは自分を幸せにするんだ、と思えるようになった。私は変わった。
音。繊細な小さな音からド派手な大きな音まで。音にはいろいろな種類がある。みんなはどんな音が好きだろうか。
貴方のことを好きになってから私の人生は明るくなりました。まさに貴方のド派手な“音”で私の未来に明かりを灯してくれたのです。
天元さん、卒業おめでとう。
言い切った。天元さんみたいに直接名前は出さなかったけど天元さんには伝わっただろうか。“音”が貴方を指していることを。
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卒業式が無事に終わったあとも生徒会は忙しい。生徒会室では生徒会役員が慌ただしく仕事をしていた。卒業式の片付けと教室の片付け。その他にもいろいろ。
生徒会室の窓から外を見ると卒業生が写真を撮ったり話したりしてワイワイと騒いでいた。
3年生、本当に卒業しちゃったんだな。寂しくなるなぁ…
声がして振り向くと梅先輩の後を継いで副生徒会長となった2年生の先輩が立っていた。
先輩は自分の制服の上から2番目のボタンを指さして言った。
行きたい。でも行けない。生徒会の仕事があるから。天元さんならきっと………
副生徒会長が生徒会室のドアを指さす。行け、と。
その瞬間私は走り始めた。
4階にある生徒会室を出て階段を降りて、降りて、降りて………。そのまま校舎を出る。
肺に空気を溜め込んでありったけの大声で叫んだ。ガヤガヤとしているその場でも天元さんの耳に届く程の声だ。
みんなこっちを見ている。卒業生も保護者の人も先生も。みんな見ている。
天元さんがこっちに向かって歩いてきた。
天元さん、どうか私に、貴方の______________
言われた通りにする。手に金属製のボタンが乗る感覚を待つ。
手のひらにボタンが乗る感覚と共に唇に何か柔らかいものが当たったのを感じた。びっくりして目を開けるといたずらっぽく微笑む天元さんが。
キスされた、と気づくのに時間はかからなかった。気づくと顔が段々と熱くなってくる。
ついじゃないでしょ!と言おうとしてふと気になったことがあった。
トップアイドルのボタンなどことごとく全部取られててもおかしくない、いや逆にそうじゃなきゃおかしいのに天元さんは私にくれた第二ボタン以外全部のボタンがついている。
天元さんの視線に合わせてそちらを向くとメンバーの卒業を祝いに来たらしい時透くんが近寄ってくる人全員に紙飛行機をプレゼントして(頭にぶつけて)いた。
時透くんらしいな、と思ってふふっと笑みがこぼれる。遠くの方にいる時透くんにお礼をいう。
声が聞こえたらしく、時透くんはこっちに向かってにこりと笑った。隣で煉獄先輩の「むぅ!!!!」という声が聞こえた。
時透くんの笑みに喜んでいると頭に何か当たった。私の頭に当たって落ちたそれを拾い上げると紙飛行機だった。5月、柱の人達に初めて会った時と同じだ。
紙飛行機を開いてみると何か書いてあった。
『別にあなたちゃんのためじゃないけど喜んでくれたならそれでいいや』
天元さん、ご卒業おめでとうございます。私、天元さん達が学校を卒業しても頑張りますね。だから天元さん達も頑張ってください。いつでも私は応援しています。
校門のそばに咲くまだ蕾だけの桜の木の間を通り抜けた春風は暖かく、春の訪れを告げていた。
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宇髄さん卒業おめでとう!!!!
いやぁキメツ学園も寂しくなるよ
寂しいよ!僕も!
とうとうこのお話も残すところあと2話。宇髄さん達が卒業したあと、どうなるのでしょうか…?
Twitterでも先に言いましたが、僕ちゃんと受験勉強頑張ることにしました。このお話が終わり次第プリ小説の投稿を受験が終わる3月まで停止します。フォロワー200人記念小説、投稿したかったけどすっごい先になりそう…その間にお話を温めとくね
どうか待っていてください。応援していてください。そして来年の3月にまた僕の読者様全員と会えることを楽しみにしてます。
なによりもあと2話、たまごぼーろをよろしくね!!僕の読者をやめないでね…(⸝⸝o̴̶̷᷄ o̴̶̷̥᷅⸝⸝)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!