第88話

第76話
1,332
2020/08/07 11:27
生徒
これから第78回卒業証書授与式を行います。





今日は卒業式。天元さん達3年生が卒業する日だ。今の3年生はお世話になった人も多いから尚更悲しい。







この卒業式には、在校生として2年生と、生徒会役員が出席している。私は1年生だが、生徒会長としてステージ上で喋らなくてはならないので出席しているのである。









生徒
続きまして、卒業生による答辞です。卒業生代表、3年C組 宇髄天元君
宇髄天元
はい!






久しぶりに天元さんがキメツ学園の制服を着た姿を見た。どんな服を着ていても天元さんは派手でオーラがキラキラしていて眩しい。







宇髄天元
春らしい暖かな日和の今日という日にこのような素晴らしい卒業式を執り行っていただけたこと、感謝致します。先程紹介して頂きました、前生徒会長の宇髄天元です。
俺が初めてこの学校に来たのは約3年前、高校の入学式の日でした。まだ右も左も分からない俺に手を差し伸べてくださった先輩方、先生方がこの学校にはたくさんいました。





天元さんは堂々とマイクに向かって答辞を述べていく。会場の人達はシーンと静まり返り、皆が天元さんの話に耳を傾けている。天元さんが喋る姿はどこかハッと目を引くところがあり、つい見とれてしまう。いつ、どこにいても天元さんは天元さんだなぁと思っていると急に名前を呼ばれた。



宇髄天元
今の俺があるのはある1人の人のおかげなのです。稲凪あなた、それがその人の名前です。彼女が俺のそばにいたこと、それがどれだけ俺に勇気を与えたか、影響を及ぼしたかは計り知れません。今の俺にとって彼女なしの生活は考えられません。
あなた

(ちょ、ちょっと!何言ってるの!?)

宇髄天元
あなた、ありがとう。俺はお前が俺のあとを継いで生徒会長となり、こんな素晴らしい卒業式を作り上げてくれたのは知ってる。お前はどれだけ辛くても人のために頑張れる人だ。ありがとう、俺のそばにいてくれて。ありがとう、俺を選んでくれて。
あなた

ッ…!








大勢の人の前で私に対する感謝を述べられ、恥ずかしさで心臓がドキドキしている。感謝なら私の方がしてるのに。天元さんにどれだけ感謝してもしきれないのな私なのに。




そう考えているうちにも天元さんの答辞は先へ進んでいく。


宇髄天元
俺たち高校3年生がこのキメツ学園高等部で過ごした3年間はきっと誰にとってもかけがえのないものとなるでしょう。これから俺たちは全員バラバラの道を歩んでいく。その中で挫けることがあってもいい。泣きたくなるようなことがあってもいい。でもその時はここで過ごした日々を思い出して欲しい。
宇髄天元
俺は高校を卒業したあと、大学へは行かずそのまま仕事に専念します。皆さんも自分の道を突き進んでください。在校生の皆さんも先輩を追いかけて頑張ってください。応援しています。
これで卒業生の答辞を終わります。







盛大な拍手が起こった。全部で5分半の大スピーチだった。涙が流れそうになった。



あなた

グスッ…




でも泣いている暇はない。なぜなら……




生徒
次に、在校生による卒業生を送る言葉です。在校生代表、1年A組 稲凪あなたさん
あなた

はい!






天元さんの答辞のあとに私は生徒会長として喋るのだ。原稿は考えてきた。天元さんを始め今までお世話になった先輩方へ。私から言葉を送る。





あなた

桜の咲いたあの入学式から11ヶ月が経ちました。私はこの1年間様々な人に出会い、様々なことを体験してきました。







私は幼稚園の頃からこのキメツ学園にいるが、中等部までの私はどちらかと言うと引っ込み思案な方だった。浮きすぎないように、目立ちすぎないように。それだけを考えて生きてきた。




だけど高校に入ってアオイ達や柱の皆さんに出会ってかまぼこ隊の仲直りして、人と関わることは自分を幸せにするんだ、と思えるようになった。私は変わった。




あなた

3年生の先輩方には本当にお世話になりました。委員会で、部活で、学校生活で、様々なところで私たち後輩を助けてくださる心優しい先輩方はきっとどのような道を歩まれても大丈夫です。壁にぶつかった時はいつでもここに帰ってきてください。私たち在校生はいつでも先輩方を待っています。

あなた

ところで音は人の心を動かす、といいます。日常生活にない瞬間はない、音。音に引き寄せられ、音に悲しみ、音に笑う。音、音楽はそれだけで人を十分に楽しませます。私も音楽をやっているからこそ分かる。人が音楽に触れた時の感動を。







音。繊細な小さな音からド派手な大きな音まで。音にはいろいろな種類がある。みんなはどんな音が好きだろうか。








貴方のことを好きになってから私の人生は明るくなりました。まさに貴方のド派手な“音”で私の未来に明かりを灯してくれたのです。






天元さん、卒業おめでとう。











あなた

卒業生の皆さん、この度はご卒業おめでとうございます。これからの皆さんのご活躍とご多幸を切にお祈りして在校生からの言葉とさせていただきます。
在校生代表、1年 稲凪あなた







言い切った。天元さんみたいに直接名前は出さなかったけど天元さんには伝わっただろうか。“音”が貴方を指していることを。


















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卒業式が無事に終わったあとも生徒会は忙しい。生徒会室では生徒会役員が慌ただしく仕事をしていた。卒業式の片付けと教室の片付け。その他にもいろいろ。





生徒会室の窓から外を見ると卒業生が写真を撮ったり話したりしてワイワイと騒いでいた。









3年生、本当に卒業しちゃったんだな。寂しくなるなぁ…





副生徒会長
本当にな。


声がして振り向くと梅先輩の後を継いで副生徒会長となった2年生の先輩が立っていた。



あなた

あ、声に出てました?

副生徒会長
出てたぞ?まぁ、先輩方が喜んでくれれば俺もそれでいいと思うけどな
あなた

そうですねぇ

副生徒会長
それよりもさ、稲凪さん。これ、いいの?




先輩は自分の制服の上から2番目のボタンを指さして言った。



あなた

え……

副生徒会長
行くなら今しかないんじゃねぇの?







行きたい。でも行けない。生徒会の仕事があるから。天元さんならきっと………







副生徒会長
こっちのことは俺らに任せとけよ
卒業式は1回しかないんだぜ?






副生徒会長が生徒会室のドアを指さす。行け、と。











その瞬間私は走り始めた。



あなた

すみません、行ってきます!!皆さん、あとは頼みました!!!!







4階にある生徒会室を出て階段を降りて、降りて、降りて………。そのまま校舎を出る。








あなた

宇髄天元先輩!!!!!!





肺に空気を溜め込んでありったけの大声で叫んだ。ガヤガヤとしているその場でも天元さんの耳に届く程の声だ。







宇髄天元
来ると思ってたぜ





みんなこっちを見ている。卒業生も保護者の人も先生も。みんな見ている。
天元さんがこっちに向かって歩いてきた。










宇髄天元
どうした、あなた
あなた

天元さん、ご卒業おめでとうございます…

宇髄天元
おう、ありがとな
あなた

天元さん、






天元さん、どうか私に、貴方の______________






あなた

第二ボタンください!!!!!!

宇髄天元
じゃあ目つぶって手出してくれ




言われた通りにする。手に金属製のボタンが乗る感覚を待つ。

















手のひらにボタンが乗る感覚と共に唇に何か柔らかいものが当たったのを感じた。びっくりして目を開けるといたずらっぽく微笑む天元さんが。





キスされた、と気づくのに時間はかからなかった。気づくと顔が段々と熱くなってくる。





あなた

天元さん!ここみんながいるところなんですけど!

宇髄天元
すまねぇ、つい‪w




ついじゃないでしょ!と言おうとしてふと気になったことがあった。



あなた

あれ、天元さんボタン全部残ってるんだね




トップアイドルのボタンなどことごとく全部取られててもおかしくない、いや逆にそうじゃなきゃおかしいのに天元さんは私にくれた第二ボタン以外全部のボタンがついている。













宇髄天元
あー、これな
俺だけじゃねぇぞ?冨岡も煉獄も柱の奴らはみんな残ってる。
まぁあいつのせいだがな






天元さんの視線に合わせてそちらを向くとメンバーの卒業を祝いに来たらしい時透くんが近寄ってくる人全員に紙飛行機をプレゼントして(頭にぶつけて)いた。




時透無一郎
ダメだよ、ダメだよ
宇髄さんたちに手出しはさせないよ









時透くんらしいな、と思ってふふっと笑みがこぼれる。遠くの方にいる時透くんにお礼をいう。





あなた

時透くーん!ありがとうー!







声が聞こえたらしく、時透くんはこっちに向かってにこりと笑った。隣で煉獄先輩の「むぅ!!!!」という声が聞こえた。






あなた

いてっ








時透くんの笑みに喜んでいると頭に何か当たった。私の頭に当たって落ちたそれを拾い上げると紙飛行機だった。5月、柱の人達に初めて会った時と同じだ。






紙飛行機を開いてみると何か書いてあった。









『別にあなたちゃんのためじゃないけど喜んでくれたならそれでいいや』








あなた

天元さん、

宇髄天元
なんだ?
あなた

時透くんってツンデレだよね

宇髄天元
はっ‪wそうだな








天元さん、ご卒業おめでとうございます。私、天元さん達が学校を卒業しても頑張りますね。だから天元さん達も頑張ってください。いつでも私は応援しています。















校門のそばに咲くまだ蕾だけの桜の木の間を通り抜けた春風は暖かく、春の訪れを告げていた。





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宇髄さん卒業おめでとう!!!!
いやぁキメツ学園も寂しくなるよ
寂しいよ!僕も!
とうとうこのお話も残すところあと2話。宇髄さん達が卒業したあと、どうなるのでしょうか…?




Twitterでも先に言いましたが、僕ちゃんと受験勉強頑張ることにしました。このお話が終わり次第プリ小説の投稿を受験が終わる3月まで停止します。フォロワー200人記念小説、投稿したかったけどすっごい先になりそう…その間にお話を温めとくね
どうか待っていてください。応援していてください。そして来年の3月にまた僕の読者様全員と会えることを楽しみにしてます。




なによりもあと2話、たまごぼーろをよろしくね!!僕の読者をやめないでね…(⸝⸝o̴̶̷᷄ o̴̶̷̥᷅⸝⸝)

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