第84話

第72話
1,280
2020/08/04 03:19
秘書
お嬢様、お乗り下さい


秘書の人が運転する車に飛び乗り急いで天元さんのマンションへ向かう。

あなた

あと何分くらいかかりそう?

秘書
30分といったところでしょうか


遅い、それじゃあ遅すぎる!
秘書の人には法定速度ギリギリまでスピードを上げてもらうことにした。







その間に私にできることはないかとイライラと考える。手にはスマホのみ。何か頼れるものはないかとスマホ内を漁る。




あなた

あ!




連絡先の欄に1人の名前を見つけた。




『村田さん(柱マネージャー)』




柱のメンバー9人の体調管理とスケジュール管理をこなすなかなか凄腕のマネージャーだという噂を聞く。村田さんとは私が天元さんとの交際を発表する少し前に連絡先を交換していたのだった。善は急げ、と早速その電話番号に電話をかけた。





村田さん
もしもし?
あなた

もしもし、稲凪ですけど…!

村田さん
あれ、あなたちゃんどうしたの?
あなた

天元さんって今日お仕事お休みですか?

村田さん
そうだね、今日天元は1日offのはず…それがどうした?
あなた

村田さん今どこにいます!?

村田さん
え、事務所だけど…
あなた

天元さんが自宅で倒れているんです!私になんとか連絡をくれたのですが、一言「家に来て」と伝えると倒れてしまい…。生憎私は天元さんのマンションまで高速に乗って30分くらいかかりそうなので、村田さん、天元さんを先に病院へ連れて行って貰えませんか!?

村田さん
天元が!?分かった、すぐ向かう。
あなた

ありがとうございます








ひとまず村田さんが向かってくれるなら少しは安心できるだろう。そう思うと頭がスッキリしてきて物事を冷静に判断できるようになった。


あなた

天元さんのマンションに行くまでにどこでもいいからドラッグストアに寄ってくれる?

秘書
かしこまりました。







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ドラッグストアで必要そうなものを買っていく。熱さまシート、ポカリ…、天元さん家って体温計あるんだろうか。食べ物は天元さんに何が食べれそうか聞いてから買いに出た方がいいだろう。








買った荷物を持って天元さんの住むマンションへとやってきた。


あなた

貴女は帰ってちょうだい。迎えが必要な場合とか何かあったら連絡するから

秘書
分かりました。それでは、お嬢様失礼致します。






エントランスにいたコンシェルジュさんに事情を説明すると荷物を天元さんの部屋の前まで運んでくれるという。


部屋の前に着くと私はキーケースの中のいくつかの鍵から1つを取り出し、鍵穴に差し込む。右に回すとガチャリと音を立てて解錠した。ちなみにキーケースの中に入っている鍵は私の家の鍵、会社の鍵、会社の重要金庫の鍵、そして天元さんの家の鍵だ。


コンシェルジュ
宇髄様から鍵を貰っていたのですね
あなた

はい、この前のクリスマスに…






結局コンシェルジュさんには部屋の中まで荷物を持ってもらってしまった。


あなた

ここら辺で大丈夫です。ありがとうございました









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村田さんと天元さんは既に病院から戻ってきていたようだ。買ってきたものを片付けていると村田さんがこちらに寄ってきた。


村田さん
風邪らしい。まぁ原因は過労による免疫力の低下だろうってよ。天元、まともに休み取らねぇからなぁ。ちゃんと休み入れとけば良かったな
あなた

村田さん、助かりました。ありがとうございます。あとは私がやるので。

村田さん
そうか。なんかあったらいつでも電話してきてな?
あなた

はい!









とりあえず寝室に行って天元さんの様子を見ることにした。


あなた

天元さん、具合はどう?

宇髄天元
ん、あなたか……すまねぇ、迷惑かけて……
あなた

迷惑なんかじゃない!天元さんちゃんと休まなきゃいつか本当に大事になっちゃうよ?

宇髄天元
分かった、今度からはちゃんと休みとる。
あなた

はい、これ熱さまシート。貼るからおでこ出して



熱は思ったより高かったらしく、これではすぐに熱さまシートがダメになるな、と思った。時計を見るとお昼の1時をまわったところだった。

あなた

天元さんお腹すいてる?何か食べれそうなものある?

宇髄天元
パンがゆ…
あなた

パンがゆ……分かったちょっと待っててね





一応冷蔵庫の中を確認しておく。大体の調味料と牛乳が入っていた。パンを買いに行こう。
ここから1番近いパン屋は「かまどベーカリー」だ。ついでにパンがゆの材料と作り方を聞いてこよう。







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あなた

ごめんくださーい

竈門禰豆子
いらっしゃいませー!あなたお姉ちゃん、どうしたの?
あなた

実は天元さんが風邪で倒れちゃって、今看病してるんだけど、パンがゆってどうやって作るの…?

竈門禰豆子
簡単だよ!食パンと牛乳があればだいたいできるよ!レシピ書いて渡すね
あなた

ありがとう、じゃあこの食パンください

竈門禰豆子
はーい、ありがとう
これレシピね!
あなた

助かった!ありがとうね、禰豆子ちゃん!

竈門禰豆子
どういたしましてー!






早速マンションに帰り、禰豆子ちゃんに貰ったレシピの通りに作ってみる。牛乳とパンと……蜂蜜…?あったかな……


あなた

あ、蜂蜜あった




この家、調味料の品揃えどうなってるんだとか思いながら鍋でグツグツ似ていると、美味しそうな匂いが辺りに漂ってきた。


あなた

うわぁ…!美味しs……

宇髄天元
美味そうだな…



声のした方を振り返ると、天元さんがベッドから起き上がってきたらしく、壁にもたれかかるようにして立っていた。



あなた

天元さん!まだ寝てなきゃダメだよ!寝室まで持っていくからさ、ほら戻って?

宇髄天元
ん……



そう言うと黙って腕を広げる天元さん。その意味が分からず頭の上にたくさんのはてなマークを浮かべていると…


宇髄天元
ぎゅ……ってしてくれ
あなた

!?

あなた

(か、か、か、かわいい!!!!)






熱が出て辛そうだけど、普段は見せない甘えたモードの天元さんが見れて私はとても嬉しい。なんというか、母性をくすぐられる。私よりも数十cmも高い天元さんの広げた腕の中に収まる。



あなた

ふふ、天元さん甘えただね?ほら寝室行って寝てて?





そのまま天元さんを寝室まで連れていき寝かせる。ついでにもうぬるくなっていた熱さまシートを取って新しいのを張り替えてやった。



あなた

もうちょっとでできるから、待っててね

宇髄天元






キッチンへ戻り、再度鍋に火をかける。温まったところでお皿に盛り付ける。スプーンと一緒に寝室に持っていくとベッドの隣に置いてあるテーブルに置いた。


あなた

天元さんできたよ、ちょっと起き上がれる?

宇髄天元
食べさせてくれないか?
あなた

いいよ






出来上がったパンがゆはとても熱いのでフーフーと冷ましてから天元さんの口に運ぶ。



あなた

ふー、ふー、はい、あーん

宇髄天元
あーん





こうやって誰かの看病をしたのは初めてじゃないだろうか。看病してもらうことはあったけど私は一人っ子だし弟や妹の世話をするということもなかった。でも自分の大好きな人の看病をするのって全然苦痛じゃないんだな、むしろ反対。幸せだ。いつも見られない天元さんの一面が見れて、私が天元さんの世話をして。心が満たされていく。














気づけば天元さんはパンがゆを全て食べ終えていた。掬おうとしたスプーンに何も乗らないことに気づいたのだ。


宇髄天元
あなた、美味かった。
あなた

良かった…じゃあ薬飲んでね

宇髄天元
分かった。














その日は天元さんの家に泊まった。一晩寝ると熱も下がったようで朝起きた頃にはいつもの天元さんに戻っていた。






あなた

おはよう天元さん。熱はどう?

宇髄天元
平熱に戻ったみてぇだな。あなたのおかげだ
あなた

ううん、私なんてちょっとのことしかやってないよ

宇髄天元
でもあなたが村田さんに連絡してくれなかったら、あなたがこうやって看病してくれなかったら俺はどうなってたか分からない。
あなた

そんなの、当たり前でしょ?天元さんはいつも私のこと守ってくれる。私の命だって助けてくれたことあるじゃん。私だって天元さんのためにできることはなんでもやりたいの

宇髄天元
ほんと、俺はすごいいい彼女を持ったみたいだ。ありがとうな、あなた





そう言うと天元さんは優しくキスをしてくれた。天元さんはいつも優しい。労わるような、キスをしてくれる。甘い一時が流れた。









宇髄天元
あ、そうだ。あなた、俺はお前に任せたいものがある。いいな?
あなた

任せたいもの…?







こうして始まったばかりの今年のひと月が終わっていく。




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宇髄さん風邪でした〜
ご心配おかけしましたか?()
最初はインフルエンザにしようかと思ってたんだけど、それじゃああなたちゃんに移っちゃうよなぁとか思って宇髄さんには働きすぎで風邪になってもらいました‪w

途中で出てきたパンがゆ、一応レシピを調べてみると、離乳食ばっかり出てきました。で、でもちゃんと大人が食べる用のパンがゆもあるんだからね!?←


次回から2月になります。バレンタイン…((ムフフ

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