秘書の人が運転する車に飛び乗り急いで天元さんのマンションへ向かう。
遅い、それじゃあ遅すぎる!
秘書の人には法定速度ギリギリまでスピードを上げてもらうことにした。
その間に私にできることはないかとイライラと考える。手にはスマホのみ。何か頼れるものはないかとスマホ内を漁る。
連絡先の欄に1人の名前を見つけた。
『村田さん(柱マネージャー)』
柱のメンバー9人の体調管理とスケジュール管理をこなすなかなか凄腕のマネージャーだという噂を聞く。村田さんとは私が天元さんとの交際を発表する少し前に連絡先を交換していたのだった。善は急げ、と早速その電話番号に電話をかけた。
ひとまず村田さんが向かってくれるなら少しは安心できるだろう。そう思うと頭がスッキリしてきて物事を冷静に判断できるようになった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ドラッグストアで必要そうなものを買っていく。熱さまシート、ポカリ…、天元さん家って体温計あるんだろうか。食べ物は天元さんに何が食べれそうか聞いてから買いに出た方がいいだろう。
買った荷物を持って天元さんの住むマンションへとやってきた。
エントランスにいたコンシェルジュさんに事情を説明すると荷物を天元さんの部屋の前まで運んでくれるという。
部屋の前に着くと私はキーケースの中のいくつかの鍵から1つを取り出し、鍵穴に差し込む。右に回すとガチャリと音を立てて解錠した。ちなみにキーケースの中に入っている鍵は私の家の鍵、会社の鍵、会社の重要金庫の鍵、そして天元さんの家の鍵だ。
結局コンシェルジュさんには部屋の中まで荷物を持ってもらってしまった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
村田さんと天元さんは既に病院から戻ってきていたようだ。買ってきたものを片付けていると村田さんがこちらに寄ってきた。
とりあえず寝室に行って天元さんの様子を見ることにした。
熱は思ったより高かったらしく、これではすぐに熱さまシートがダメになるな、と思った。時計を見るとお昼の1時をまわったところだった。
一応冷蔵庫の中を確認しておく。大体の調味料と牛乳が入っていた。パンを買いに行こう。
ここから1番近いパン屋は「かまどベーカリー」だ。ついでにパンがゆの材料と作り方を聞いてこよう。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
早速マンションに帰り、禰豆子ちゃんに貰ったレシピの通りに作ってみる。牛乳とパンと……蜂蜜…?あったかな……
この家、調味料の品揃えどうなってるんだとか思いながら鍋でグツグツ似ていると、美味しそうな匂いが辺りに漂ってきた。
声のした方を振り返ると、天元さんがベッドから起き上がってきたらしく、壁にもたれかかるようにして立っていた。
そう言うと黙って腕を広げる天元さん。その意味が分からず頭の上にたくさんのはてなマークを浮かべていると…
熱が出て辛そうだけど、普段は見せない甘えたモードの天元さんが見れて私はとても嬉しい。なんというか、母性をくすぐられる。私よりも数十cmも高い天元さんの広げた腕の中に収まる。
そのまま天元さんを寝室まで連れていき寝かせる。ついでにもうぬるくなっていた熱さまシートを取って新しいのを張り替えてやった。
キッチンへ戻り、再度鍋に火をかける。温まったところでお皿に盛り付ける。スプーンと一緒に寝室に持っていくとベッドの隣に置いてあるテーブルに置いた。
出来上がったパンがゆはとても熱いのでフーフーと冷ましてから天元さんの口に運ぶ。
こうやって誰かの看病をしたのは初めてじゃないだろうか。看病してもらうことはあったけど私は一人っ子だし弟や妹の世話をするということもなかった。でも自分の大好きな人の看病をするのって全然苦痛じゃないんだな、むしろ反対。幸せだ。いつも見られない天元さんの一面が見れて、私が天元さんの世話をして。心が満たされていく。
気づけば天元さんはパンがゆを全て食べ終えていた。掬おうとしたスプーンに何も乗らないことに気づいたのだ。
その日は天元さんの家に泊まった。一晩寝ると熱も下がったようで朝起きた頃にはいつもの天元さんに戻っていた。
そう言うと天元さんは優しくキスをしてくれた。天元さんはいつも優しい。労わるような、キスをしてくれる。甘い一時が流れた。
こうして始まったばかりの今年のひと月が終わっていく。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
宇髄さん風邪でした〜
ご心配おかけしましたか?()
最初はインフルエンザにしようかと思ってたんだけど、それじゃああなたちゃんに移っちゃうよなぁとか思って宇髄さんには働きすぎで風邪になってもらいましたw
途中で出てきたパンがゆ、一応レシピを調べてみると、離乳食ばっかり出てきました。で、でもちゃんと大人が食べる用のパンがゆもあるんだからね!?←
次回から2月になります。バレンタイン…((ムフフ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。