第82話

第70話
1,486
2020/07/17 16:10
あなた

お母さん、これとこれどっちがいいかな!?




三が日もあっという間に過ぎ、今年最初の土曜日がやってきた。我が家、稲凪家は朝からてんやわんやの大騒ぎである。それもこれも今日は天元さんとの初詣デートの日だからである。






私の希望で2人とも着物で行くことになった訳だが、ただ今絶賛髪飾り悩み中です。














お母さん
そうねぇ…あなたならどっちも似合うわぁ
ねぇ、あなた?
あなた

時間がないの!天元さんが来ちゃう!

お父さん
じゃあ左のはどうだ?今着てる着物にもよく合うじゃないか
あなた

ほんと?じゃあこっちにする





今日はお正月らしく赤が基調の着物だ。白い牡丹が散りばめられていて、とても綺麗な着物。それに合わせるかのように髪飾りは白色にした。












お母さんが髪を結ってくれ、飾りをつけてくれる。私はその間にメイクを済ませる。











宇髄天元
そろそろ着くぞ
あなた

分かった!









数分後、家のインターホンが鳴り、訪問客が来たことを知らせる。



















あなた

はーい!

宇髄天元
よう、あなた
あなた

天元さん、おはよう!






天元さんは紺色の無地の着物をバッチリ着こなしていた。聞くとおじいさんが若い時に着ていたものだという。長持ちだなぁと1人感心した。

いつもはヘアバンドで少し長めの銀髪をひとまとめにしているのだが今日は下ろしている。派手なメイクもしておらず天元さんのもともとの顔の良さが際立っている。








あなた

天元さん、かっこいい……




神社への道を2人で歩きながらふとそんなことが口から出た。ほとんど無意識である。





宇髄天元
なぁに言ってんだ
俺はアイドルだからな
あなた

ふふふ、知ってますよぉ

宇髄天元
ま、お前の方が可愛いけどな
あなた

ッ///







もう、本当に天元さんはサラッとそんなことを言うんだから。そんな恥ずかしいこと自然に言われたら私が照れるって知ってるくせに。





















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まだまだお正月気分が抜けない今、神社への参道にはたくさんの出店があり、そこにたくさんの人が並んでいた。夏のお祭りのような雰囲気に私の気持ちはどんどん高まっていく。







あなた

わぁ!すごいたくさんのお店…!

宇髄天元
なんか食べたいのあったら言えよ?
あなた

天元さんもだよ?












たこ焼きにたい焼き、クレープ、ベビーカステラ、綿菓子にりんご飴。所狭しと並んだテントの中で美味しそうな食べ物たちがキラキラと輝いている。散々悩んだ挙句、クレープを食べることにした。









あなた

私、チョコバナナ!

宇髄天元
んじゃあ俺もそれで











寒空の下食べるクレープはとても甘くて美味しかった。チョコとバナナの割合がちょうどよくて、そこへ絶品の生クリームがプラスされる。美味しさの極み。






あなた

ん〜!美味しい!!

宇髄天元
クリーム、ついてんぞ?
あなた

え?

宇髄天元
ほら、ここ








ペロっ


















ずるい、私だってそんな余裕そうにかっこいいことしてみたいよ…。




あなた

天元さんかっこよすぎてずるい…

宇髄天元
なんだよ‪、それ‪w



















クレープを食べ終えた私達はどんどん参道を進んでいく。お店は何も食べ物だけを売っているわけではなかった。おもちゃやダルマなどの置物…様々だった。その中でも一際目につくお店があった。









あなた

キツネ…








キツネの面を売っているお店だった。一つ一つ手作りなのだろうか、同じように見えるキツネの面は全て柄が違った。






あなた

天元さん、このお店見てみてもいい?

宇髄天元
おう、いいぜ
キツネの面か。着物に合いそうだな?
???
いらっしゃい。










お店に入ると聞いたことのある低い声が聞こえてきた。








あなた

え、鱗滝さん!?

鱗滝左近次
誰かと思えば、あなたではないか。どうした?
宇髄天元
あなた、知り合いか?
あなた

うん、私がよく行く喫茶店のオーナーで、冨岡先輩の叔父さんだよ

鱗滝左近次
お前は…宇髄天元か
宇髄天元
あ、はい。冨岡と同じ「柱」っていうアイドルやってます
あなた

キツネの面すごいね!これ全部手作り?

鱗滝左近次
ああ。そうだ。「厄除の面」という。真菰と錆兎も来てるから呼ぶか?
あなた

うん!会いたい!









天元さんとお店の「厄除の面」を見て回っていると、真菰と錆兎が店の奥から出てきた。





真菰
あなたちゃん!着物似合ってるよ!!
錆兎
いいんじゃないか?
あなた

真菰!錆兎!お面欲しいんだけど、どれがいいかな?

真菰
これなんてどう?





真菰が選んだのはピンクの花柄のお面だった。




あなた

かわいい!天元さんのも欲しいの。

錆兎
宇髄天元、これをつけてみろ
宇髄天元

あ、ああ。









錆兎が選んだ天元さんのお面は、いつも天元さんが目にしている赤のメイクと同じ柄だった。




あなた

この柄って…

錆兎
俺らの従兄弟は義勇だからな。一応試作品みたいな感じで柱のメンバーのお面は作ってある。
真菰
まさか本人につけてもらえるなんてねー
あなた

ありがとう、真菰、錆兎!これにする!













私の分と天元さんの分。2つの厄除の面を買い、お店を出る。それにしてもこんな所で鱗滝さん親子に会うなんて思ってもいなかった。聞くところによるとお正月はこうして鱗滝さんが内職がてら作っている「厄除の面」を売りに来ているらしい。文字通り厄を除くと言われるこのキツネのお面は縁起がよく、この時期には売れるらしい。


















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本殿に着くとさらに人は増えていた。人の多さにびっくりしながらもはぐれないように手をしっかり握り、進む。




お賽銭を投げてお願いごとを心の中で呟く。















あなた

(これからも天元さんと一緒にいられますように。)

あなた

(私が社長となっても会社がより繁盛しますように。)












私がしっかり願い事を伝え、目を開けると天元さんは既に終わっていたようで私を待ってくれていた。





あなた

ごめん、遅くなっちゃった…

宇髄天元
熱心に願い事してたな、何をお願いしたんだ?
あなた

言ったら叶わなくなりそうだから言わない!
天元さんは何をお願いしたの?

宇髄天元
あ?お前が言わねぇなら俺も言わねぇ。
まぁお前と一緒だ、多分。
あなた

えへへッ…
て、天元さん!次、おみくじ引きましょ!







照れ隠しのように私は天元さんをおみくじの方に引っ張っていく。天元さんも私と同じことを願ってくれていたのか。それだけで幸せだなって思える。やっぱり私には天元さんしかいないようだ。


















あなた

天元さん、おみくじどうだった?

宇髄天元
俺、大吉!!
あなた

私も!恋愛のところ、「今在る人を大切にすべし」って書いてある!

宇髄天元
んーと?俺は…「其の人、生涯を共にせむ。」だとよ!一生一緒だな、俺ら
あなた

あたってるよ!














2人とも「大吉」だったので持ってきた財布にちっちゃく折ったおみくじを入れてそのまま持って帰ることにした。






















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お揃いのお守りを買い、参道を下っていた私たちは天元さんの提案で少し参道から外れたところにある大正ロマン溢れる地域に足を運んでいた。









あなた

すごい…現代にもこんなところあるんだ…

宇髄天元
今日はちょうど着物だからな。雰囲気もピッタリじゃねぇか
あなた

うん!








昔ながらの建物が並ぶ町並みはまさに風情があった。甘味処や旅館などたくさんのお店が並び本当に大正時代にタイムスリップしたかのように感じる。


















しばらく2人でブラブラしていると急に声をかけられた。












???
すみません、今お時間大丈夫ですか?
宇髄天元
はい?
カメラマン
私今、雑誌の取材で「仲良しカップル」特集のための写真を撮っているのですが、お2人がまさにテーマぴったりなカップルですのでお写真を撮りたいんですけどよろしいですか?
あなた

天元さん、撮ってもらいましょ?せっかくだし!

カメラマン
天元…?あ、柱の宇髄天元さんですか!?
…ということは「ホテル inanagiカンパニー」の次期社長の稲凪あなたさんですか!?
宇髄天元
ああ。派手にそうだぜ
まぁ、その情報は載せてくれても構わねぇ
撮ってくれ。
カメラマン
はい!ありがとうございます!










声をかけてきたカメラマンさんはプロの人らしく、撮ってもらった写真を確認するととても綺麗に2人が写っていた。大正ロマンな町並みに佇む2人の着物姿の若者。












あなた

すごい!綺麗!

カメラマン
良かったらお写真をお送りしますよ?
あなた

ほんとですか!?会社で構わないので、送ってください

カメラマン
分かりました。写真が出来次第お送りします





















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大好きな人と行く初詣はドキドキして、それと同時に幸せを感じることができた。ずっと天元さんと一緒にいる、と神様に誓ったから何があっても私は天元さんの傍から離れない。大人になっても、おばあさんになっても今の気持ちを忘れないようにしよう。






楽しい時間というのはあっという間に過ぎていくもので、気づけば辺りは暗くなり始めていた。まだまだ寒い1月の夜は早い。完全に暗くなる前に家に帰る。




あなた

天元さん、今日はありがとう。すごい楽しかった!またいろんなところに行けたらいいな…

宇髄天元
ああ。休みが取れたらいつでもいこうな
俺もド派手に楽しかったぜ













「どんなことがあっても天元さんの傍を離れない」



私がこの言葉を思い出すことになるのはもう少し先の話。











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初詣デート編!
お久しぶりの今回はこれまたお久しぶりの鱗滝さん親子を出してみました。「喫茶 うろこだき」の副業…‪wちなみにあなたちゃんが買ったピンクの花柄のお面は真菰が柄を描いたお面で、柱のメンバーのお面の柄を描いたのは錆兎です。鱗滝さんが描いたやつを1個も勧めない子供2人‪wまぁ良しとしましょうか。


「たまごぼーろ小説進捗状況🍳」の方で(とても)大切なお知らせをしています。この小説はもちろんのこと、僕の他の作品を読んでいる人はぜひ御一読願います。僕のページの「活動報告」ってところから読むことができますよ〜


まぁそこに書いてあることなんですけど、この小説は8月中、遅くとも9月中旬までの完結を目指したいと思います!できるかな…頑張ります‪w

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