第8話

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2026/02/24 14:00 更新

「 自分、今ちょっとホッとしたやろ。俺の顔見んで済むと思て、安心したんか? 」



『 そのようなことは… 』



「 嘘つけ。顔に出とんねん、アホ 」



直哉は不機嫌そうに立ち上がると、袴の乱れを無造作に整える。そして、部屋を出ようとする間際、跪いたままのあなたを振り返り、意地悪く目を細めて言い放った



「 勘違いすんなよ。お前を解放したわけやないからな。…俺が戻ってくるまで、どっこも行くな。もし他の奴の茶ぁ淹れとるの見つけたら、その時はほんまに承知せぇへんからな 」



直哉はそう言い残すと、不機嫌な足取りで部屋を出て行った。残されたあなたは、彼が去った後も肩に残る熱と、彼が最後に向けた独占的な視線の余韻に、しばらくその場から動くことができなかった



空になった二つの湯呑みを盆に載せる。



あなたが、直哉の座っていた座布団の皺を丁寧に伸ばし、ようやく立ち上がろうとしたその時。…ピシャリ、と音を立てて襖が開いた



『 っ!? …直哉、様? 』



そこには、さっき出ていったはずの直哉が、片手を腰に当てて立っていた。案外早く戻ってきた彼に、あなたは手に持っていた盆を落としそうになるほど驚いて固まる



「 なんや、自分。ほんまにまだおったんか 」



直哉は部屋に入るなり、不敵な笑みを浮かべてあなたを上から下まで眺めた。



『 え、ええ。片付けを、しておりましたので。…すぐにお暇しようと思って 』



「 嘘つけ。片付けなんて、とっくに終わっとるやろ。俺が ‪”‬どっこも行くな‪”‬ 言うたから、律儀に震えて待っとったんやろ? ほんま、可愛いとこあるやん 」



直哉は歩み寄り、あなたが整えたばかりの座布団に、わざと乱暴に腰を下ろした。そして、逃げようとするあなたの着物の裾を、指先でひょいと引っ掛ける



『 …っ。…あ、あの、当主様のお話は 』



「 あんなん、すぐ終わらせてきたわ。…あーあ、せっかく戻ってきてやったんに、そんなに嫌そうな顔すんなや。…ほら、そこ座れ。さっきの続き、まだ終わってへんやろ? 」



直哉はそう言って、自分の隣の畳を軽く叩く。

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