side 慧
小さい頃から俺は女が嫌いだ 。
本当に死ぬほど嫌いだ 。
何故かって ?
………___理由は簡単母親が嫌いだから 。
〜 幼少期 〜
母「……貴方っていっつもそうよッ!!」
父「………慧に悪気は無いのかッ?!」
母「そんな事言って、貴方こそ
慧に何かしてあげた事、1度もないくせに!」
父「お前は母親として慧に何かしたのかと
聞いてるんだよ !」
やめて欲しい 。俺のためみたいに言うのは
別に 、何も思ってないくせに 。
2人ともあたかも俺の事を考えているような
物言いで話を進めていくんだ 。けど 、まぁ
いつもの事 、そう"コレ"が俺のうちの日常 。
おまけに母親は父親が忙しくて家に帰らない
不安やストレスを俺にぶつけるようになった
父は大企業の社長様 。んで母は社長夫人様 。
家はいつも広いリビングに俺と俺の執事だけ。
食事をするのも大きなテーブルに1人きりだ 。
誕生日だって豪華なホールケーキ食べ切れる
わけが無い 。それが俺には辛かった 。
残るケーキが 。大きなケーキが 、
いいや 、それだけじゃない 。
広いテーブルに沢山の食事を1人で食べる事 、
"ただいま"の後が"おかえりなさいませ"って事
別に豪華じゃなくていい 。普通でいいんだ 。
三ツ星シェフ? 特上の肉?ミシュラン?
そんな事どうでもいい 本当にどうでもいい 。
ただ普通に母親の暖かい料理が食べたかった。
ただ普通の家庭で食卓を囲みたかった 。
1度でいい 。家族揃って笑い合いたかった 。
でも 、俺の母親は俺と父さんを置いて
新しい男をつくって出ていった 。
でも 、悲しくはなかった 。
絶望 ?失望? ………いや 、幻滅したらしい
実の母親に捨てられる苦しみは
小さかった俺に相当 のトラウマを残した 。
数年経って 、ある日 。
俺は幼稚園帰り執事と家の前を歩いていたんだ
すると前から俺の母親が男と 、小さな子供を連れて歩いてくるのを見た 。
困ったように戸惑う執事を横に 、
俺は泣きながら必死に走って家に帰った 。
その時の俺はまだ幼かったから 、
現実を受け止め切れなかったけど 。
成長して行くに連れて受け止めて行った
それと共に母親が嫌いになって 。
女が嫌いになった 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。