全ての授業を終え、帰り支度をする。
今日はいつもと一風変わっていた。
その1、好きな人と遭遇した。
その2、好きな人に喧嘩売った。
その3、多分変なやつだと思われた。
……まぁ認知はしてくれた気がする。
それならいいや。
ヒュッ、と空を切る音がしたかと思うと、目的地の家が目の前にあった。
この個性ほんと地味に便利だなぁ。
戦うのにはあんま向いてない気がするけど。
攻撃手段ないし。
……さて、と。
瞬間、コメント欄が高速で動き出す。
“聞こえてますよー”
“OKです”
“待ってましたぁ!!”
と、コメ欄がそんな内容のもので埋め尽くされる。
……そう、冒頭でも話した通り私は配信者。
それも数百万という登録者を抱えた、まぁそこそこ人気のある活動者……だと思う。
今、もしかしたら私の口調に違和感を感じた人がいるかもしれない。
……私は生まれつき、声が中性的だ。
だから性別や、年齢、その他諸々何も明かさずに活動を続けている。特に理由はないが。
そのため、如何にも女の子っぽい喋り方はしないようにしてる。まぁ元々、女の子って感じの喋り方あんま好きじゃないんだけど。
画面から……手が出てきた。
何言ってんだとか思われるかもしれないが本当だ。
このゲームの作者は、そういう個性なのだろう。
それから数時間くらい、ちょくちょく出てくるホラー要素に叫びながら配信を続けていた。
するとこのゲーム最大の脅かしホラーグロ要素であろうものが出て来て、あられもない悲鳴を上げてしまい、リスナーに笑われてしまう。
今のは近所迷惑レベルで叫んでしまった。やばい。
誰かが心配して家に入ってきたり……いやそれは無いか。
___ガチャッッ
玄関のドアの開く音。
と同時に、誰かが走ってくる音が聞こえる。
咄嗟にリスナーにトイレへ行くと告げマイクをミュートにし、急いで実況部屋から出て鍵を閉める。
あら爆豪さんじゃありませんか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。