原口side
私は、4歳と6ヶ月になった娘を保育園に預けながら仕事をしている。
娘はやっと少し喋れるようになって、いろんなことを覚えている。
今日は彼がシンガポールから帰って来る日。
娘はテレビ電話で彼の顔を見ただけで実際に会うのは初めて。
だから、早く合わせたい。
私も会いたい。
時間になり、娘を抱っこして空港へ向かう。
タクシーに乗って、空港のロビーで彼が来るのを待っていた。
10分ぐらいになって、次々と乗客が降りてきた。
私も、必死になって彼を探す。
すると、遠くで私を呼ぶ声がする。
直ぐに彼だと分かり、彼の元へ駆けつける。
私は咄嗟に彼を抱きしめた。
彼もまた私を抱きしめた。
すると、娘も彼の足にしがみついて泣き出した。
彼は菜都の頭を撫でていっぱい抱きしめた。
娘を抱っこして、泣き止むのを待った。
私は、菜都を抱っこして空港を出た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!