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第34話

十日目 侑
人が目の前から消えた。


そう実感したのは、次の日だった。

いや、実際はまだ実感なんてなかった。

ただ、昨日の出来事は夢ではないことだけは分かる。


そんな事を考えながら俺は今、莉愛夏と大学に向かっている。

ちゃんと、自分の足で。
姫川莉愛夏
姫川莉愛夏
昨日の事、夢ではないのね。
莉愛夏は俺の足元を見ながら、そう独り言のように呟いた。
菊池侑
菊池侑
ああ、そうだな。
特に何も考えず上の空の状態でそう答えた。


そこから会話が続く訳ではない。
お互いなにも喋らずに歩き続ける。
あ、本当に夢じゃないんだな。
菊池侑
菊池侑
え?
聞き覚えのある声が聞こえ、驚いて振り返るとそこには川岸さんがいた。
川岸慶吾
川岸慶吾
よ。
姫川莉愛夏
姫川莉愛夏
か、川岸さん?、なぜここに?
川岸慶吾
川岸慶吾
今日授業ないから。来てみた。
菊池侑
菊池侑
き、来てみたって...
なんで俺らがいる場所知ってるんすか...


て言うか、さっき...
菊池侑
菊池侑
あの、夢じゃないんだってどういう...?
川岸慶吾
川岸慶吾
そのままの意味だけど。
菊池侑
菊池侑
いやだからそれってつまり?
川岸慶吾
川岸慶吾
夢なら良かったのにって少し思っただけだ。
菊池侑
菊池侑
はあ...
川岸慶吾
川岸慶吾
お前の足見れば分かるかと思って。
なるぼど。

まあ、理解。

川岸さんの能力と代償、分かりにくいですもんね。

理解したことにしときましょう。
姫川莉愛夏
姫川莉愛夏
本当、夢なら良かったのに。
莉愛夏はまたさっきと同じようなことを呟いた。

悲しそうな顔をしながら。
川岸慶吾
川岸慶吾
そうだな。
川岸慶吾
川岸慶吾
過去を変えることは出来ない。
川岸慶吾
川岸慶吾
それって本当に辛い事だよな。
川岸慶吾
川岸慶吾
でも、その過去を最悪だと思っている過去を良かったって、そう思えるような過去に出来ればいいんじゃないか。
ええっと......
菊池侑
菊池侑
どういう、意味ですか?
川岸慶吾
川岸慶吾
そりゃ、人の死を良かったなんて思えないだろうけど、
川岸慶吾
川岸慶吾
過去の事なんか気にせず、好きなように生きたらいいと思う。ってこと。
川岸慶吾
川岸慶吾
未来とかも気にせず。
川岸慶吾
川岸慶吾
寿命もだ。
川岸慶吾
川岸慶吾
寿命なんかどうでいい。今を好きなだけ生きればいい。
川岸慶吾
川岸慶吾
って俺は思うよ。
.....そうだよな。

確かにそうだ。
菊池侑
菊池侑
川岸さん、いいこと言いますね。
川岸慶吾
川岸慶吾
なんだその上からな言い方は。
そう言って呆れ顔をする川岸さんが見える。

隣にはその光景を見て笑っている莉愛夏がいる。


そんな今この時間が本当に幸せだと感じる。

時間.....か。


なんで俺は時間を操りたいと想ったんだろうな。

この先きっと辛いことも沢山あるし、今までだって辛いことは沢山あった。


それでも、その時間をいくら操ったって幸せな時間が増えるわけでも、辛い時間が減るわけでもない。

だったら、時間なんかいじらなくても今のままで充分だろ。


だって、時間が操れたら今この一瞬の価値が薄れてしまう。

一分一秒の価値を大切に、俺は生きていきたいと思うから。