そう笑いながらお箸を手に取った仗助さん。いや、あなたからすれば私が緊張し過ぎてるように見えてるかもしれないですけど私は今かなりヤバい状態でしてね、あのですね、あっあっあっ(早口)(ノンブレス)
そう脳内大混乱フェスティバルをめでたく開催していると、お味噌汁がとうとう仗助さんの口に入っていった。あーーー!!私のお味噌汁ー!!
何を言われるか怖かったので、仗助さんから顔をそらしていると、突然「うんめぇ!!」と言う大きな声が聞こえた。
見てみれば、お味噌汁の具を頬張った仗助さんが目をキラキラさせながら私を真っ直ぐ見てそう言っていた。
そう言いながらたちまちお椀の中のお味噌汁を完食してしまった仗助さん。あっという間過ぎる…さっき食べ始めたばかりだったのに…。
でも、美味しいと言ってもらえたことが何より嬉しかった。お母さんにはいつもここがダメだ、あそこがダメだとダメ出しばかりされていたから。
まさかのおかわり要求されたー!!一杯完食したことに安心したと共に驚いているのに、おかわりまで!?こんな嬉しいことってあるのかな!!
私はルンルンでキッチンに向かい、お椀にお味噌汁を注いだ。
あれだけダメ出しされたけど、それも全部私のためだったんだと思えた。言おうと思う前に、口が勝手に感謝の言葉を言っていた。本当に、お母さんには頭が上がらないなぁ…。
今日はとっても良い日だなと思わずニマニマしてしまう。仗助さんのいる部屋に近付くと、仗助さんがひょっこりとこちらを覗いて面白そうに笑っていた。
唐突な「可愛い」発言に驚きが隠せなかった私は、思わずその場でお味噌汁を持ったまま行儀の悪い悲鳴を上げてしまった。
わ、私は悪くないです!!そんなこと言う仗助さんが悪いんですからね!!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!