私は困惑してその場でフリーズしていた。私はこんなのを想像していたのではない。私は旦那様が"1人"いらっしゃるのを想像していたのだ。
しかし、見てみればそこにはやはり男性が5人いる。何かの間違いなのだろうか。それとも、「折角だから」とご兄弟も連れて来たのか。
取り敢えず後者であって欲しいなと思いながらついて行った。近くに立ってみて思ったのだが、3人程凄いくらい身長が高い人がいる。
このように言っては失礼かもしれないが、まるで壁のようにそびえ立っている人達に私は少し怖くなった。
私は混乱して、状況が全く掴めなかったのでお父様に小声で聞いた。
言いかけたところでお父さんから鋭い睨みを食らい、一気に縮こまる私。そんな私を見ていたのか、茶髪の方が「プッ」と笑っていたのが聞こえた。
しかし、それを見た青髪の方が「こらジョセフ、笑っちゃダメだよ」と注意していた。当然のことだが、英語で。しかし話すスピードがまあ速い。果たして大丈夫なのだろうか。
大広間に着いた私達は、5人を椅子に座るように促した。5人は丁寧にお礼を言って、全員が同じタイミングで腰かけた。練習したのかと疑うくらいだ。
両親に促されて私も向かいの椅子に座った。5人の視線が一気に集中して、思わず下を向いてしまう。しかし、両親とも小声で「まずは挨拶頑張って」と励ましてくれた。
そうだ、まずはちゃんと挨拶をしないと失礼になってしまう。私は軽く深呼吸をして、挨拶をした。
ホッとしたような、ガックリしたような。日本語を話せると言うから安心したんだけど、逆にここまで英語を勉強してきた日々を思うと………うん。
しかし、お陰で会話の問題が解消されたのは確か。少しは話しやすくなるだろう。私が緊張し過ぎたあまり変なことを言っちゃったりしない限りは問題ない。
そう言って微笑む茶髪さん。なんと寛大な方なのだろうか。正直未だに混乱しているが、私と話したいからと日本語を勉強してくれたのかと思うと、最早感動する。
早速私への気遣いにキュンとした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!