ー遡ること2年前ー
当時中学2年だった真斗は、自分の部屋でTVゲームをしていた。
と、そこに
『まー君!まー君!♪』
という元気な女の子の声が、家の外から聞こえてきた。
気付いた真斗は、慌てTVゲームのリモコンを置き、部屋の窓を開ける。
『…なぎ、どうした…?』
『あ、まー君!外で一緒に遊ぼうよ!まー君の事だから、絶対ゲームしてたでしょ〜?w』
そう言って少女は満面の笑顔を見せる。
背が低く、髪をツインテールにまとめ、童顔で少し幼く感じられるこの少女の名前は星埜渚(ホシノナギサ)。真斗の家の隣に住んでいる幼稚園からの同い年で幼なじみの1人だ。
『…あはは…やっぱバレた?w』
図星をつかれた真斗は何も言えず、ただバツが悪そうに頭をかいて苦笑いを浮かべる。
『分かるよ!まー君の事なら何でも、ね?』
渚はそう言うと、笑顔で持っていたサッカーボールを掲げる。
『ねぇまー君!パパにサッカーボール買ってもらったから、公園でサッカーやろうと思ってるんだけど一緒にやらない?まー君、サッカー好きでしょ?』
渚はそう言って楽しそうにサッカーボールを高く上げる。
『…あぁ!今行くから待ってろ…!』
真斗は笑顔で頷くと、部屋の窓を閉めてTVの電源を落とし、クローゼットを開けると服を漁り始めた。
『どんな服にすれば、なぎは振り向いてくれんだろ…っ!//』
ふとそんな捨て台詞をボソッと吐くと、不意に我に返り、自分の言った言葉に羞恥心を抱き、顔を赤く染める。
『俺は何言ってんだろ…そんなことあるはずねぇのに…』
そんな様なことをブツブツと呟きながら着替える。
一方、渚はというと…
『まー君の好きな物に合わせれば…まー君、振り向いてくれるかな…?//』
真斗が来るのを待ちながら、ふとそんな事を考えていた。
真斗は着替え終わると、急いで十字架のネックレスを付け、靴を履いてドアを開ける。
十字架のネックレスは、真斗の誕生日に渚がプレゼントしてくれた真斗のお気に入りだ。
渚と一緒に遊ぶ時は、毎日身に付けているのだ。
『なぎ、お待たせ!ごめん結構時間かかって…』
真斗は家を出ると申し訳なさそうな表情を浮かべる。
『ううん、大丈夫!さ、早く行こ!時間無くなっちゃうよ!♪』
『あぁ、行こう!』
渚はそう言うと公園に向かって走り出す。
真斗も頷き、笑顔で走って渚の後を付いていく。
2人はまだ知る由もない。
この先で、2人の人生を揺るがすある事に巻き込まれることなど…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!