あなたさんside
朝。
私が会社に行くと、ちょっとした騒ぎが起こっていた。
オフィスのみんなの視線が私に集まっていた。
私、なんかしたっけ…?
部長と一緒に倉庫に向かう。
部長は無言のまま険しい表情をしている。
倉庫に入ると部長が重い口を開いた。
しらばっくれるつもり…?
なんの事…?
カッター?
脅迫文?
何それ。
そんなの私知らない。
むしろ私が美原さんにいじめられてたぐらい。
おかしい。
嫌な予感はこれの事だったの…?
そう言えば。
昨日オフィスを出るときに人影を見た。
もしかして、あれ?
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なんだそれ。
でも許してもらったし(?)いいか。
やってないんだけどなあ
また倉庫に連れ戻された。
美原さんは手に、
カッターを握っていた。
ザシュッ
美原さんがカッターで自分の腕を切った。
いわゆるカッターキャーだ。
間の悪いことに部長が来てしまった。
部長は冷たく言い放って戻って行った。
嘲笑いながら美原さんも去っていく。
信じられなかった。
悪い夢だと思った。
嫌だ。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。
怖かった。
とぼとぼと歩いて倉庫のドアの方へ戻る。
誰かが見ていたような気がしたが気にも止められない。
急いで帰る支度をして、逃げるように家に帰った。
怖い。
なんで、私は何もしていないのに。
私はいつもこうだ。
なんで。
怖い。
どうして
いつも。
なんで
私。
もう嫌だ。
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気づくともう夜だ。
あの後すぐ寝てしまったようだ。
ぼーっとしてソファーに座ると、チャイムがなった。
また、怒られるのかな。
そう思うと、憂鬱で仕方なかった。
やっぱり。
そう来ると思った。
どうせ、信じて貰えないんだ。
悪役にでも何にでもなってしまえばいい。
「そんなことしたの」
そう続くと思ってた。
坂田さんが帰っていく。
よかった。
私のことを信用してくれている人がいた。
明日。
ちゃんと行かなきゃ。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!