朝起きて、ベッドから抜けようとした時。
グイッと誰かに引っ張られベッドに倒れ込んだ。
『わっ!…グゥ起きてるなら言ってよ』
グクはニヒルな笑みを浮かべ「ヤダ…」と言った。
そのまま、グクはセナを抱き締めた。
「セナ、ごめんな。僕何にも分かってなくって…セナを苦しめてたよね…ごめん。ごめんね。」
グクは声音を変えセナの背中に顔を埋めた。
『…私もごめん。もっと早く皆に頼っとけば良かったよね…ごめんなさい。』
セナも眉を下げた。
「…僕だけを頼ってよ…」
『え…?』
その返答は予想外過ぎて間抜けな声が出た。
「僕、セナの事が好き…。」
グクは頬を少し赤らめ言った。
『あ…で、でも…』
「分かってる。」
グクはセナの返答を予測した。
「僕の事、仲間って言う風にしか見てないってのは分かってる。」
『ごめん…グゥ…。』
グクは微笑んだ。
「別にセナは悪くない…僕がただ想いを伝えたかっただけ。セナにはずっと笑って欲しいから…ね?」
だから笑ってよ、っとグクははにかんだ。
セナは涙が出そうになるのを堪えた。
丁度その時、扉が開く音がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。