10月下旬の 夜8時
私たちはタクシーに乗って、そのお店に向かった。
でも、満席でしばらく空きそうにないとのこと。
ここら辺俺らあんま免疫ないからな…
じゃあ俺んちとか?
いや、それはいろんな意味でやばいかも。
いや、でも呼びたいかも…
えー…
まあ聞いてみっか。
そう言って自分の厚手のジャケットを貸した。
ほんとはちょっと寒い…
うそ、めっちゃ寒い。
でも、それでくるみが帰りたいって気持ちが
少しでも減るなら嬉しい。
俺、結構重症だな。
手繋ぎたいとか。
触りたいとか。
笑った顔好きだけど、
怒った顔も好きかもしれないとか。
俺だけのこと見て欲しいとか。
“ くるみ ”じゃなくて、“ あなた ”って呼びたいとか。
本当は全然そんなタイプじゃないというか。
もちろん今まで好きだと思った女の子は何人もいる。
まあ、人並みに。
でも、そんなこと今まで思ったことなかった。
笑ってる。
可愛い。
好き。好き。
人気の少ない夜の街。
俺は口走ってしまった。
でも仕方ない。
俺の想いを膨らませたのは、
紛れもなく来海あなただから。
俺のものになってよ…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。