夜の街。
大学に入学するときに上京して、
東京で就職もして、
それなりに働いてお金稼いで、
恋愛とか身体だけの関係とか、
人並み以上には経験して。
私は自分の容姿に自信がある。
歩いていれば、誰かが声をかけてくれる。
いい男だったら、ついて行って、
そうじゃないなら、突き放す。
そんな自分を、かっこよく思うわけでもないが、
なぜか満足してる。
自分自身は別に好きではない。
ただ、いい男を連れてる自分が好きなんだ。
今日はこのBARで、誰でもない誰かを待つ。
今まででいちばんのあたりかも。
身長はそこまで高くないけど、すらっとしていて、
顔はあまり見えないけど、
姿が美しい。
彼を知りたい。
不意にそう思った。
彼が座るとき、眼鏡の向こうに美しい瞳が見えた。
私は分かってしまった。
[ 岩田剛典 ]だってことを。
驚いてちょっと焦ってる。
いや、かなり。
いい男は狙ってたけど、スターを狙ってたわけじゃない…
芸能人と関わるのは危険だからいや。
だからこの “ 岩ちゃん ” はナシね。
でもお酒だけなら。
なに自分で薦めといて驚いてるの…
私はそのカクテルを頼んだ。
そう言って彼は少しニヤリと笑った。
流れる前髪
細い眼鏡
美しい輪郭
なんでこんなにも、美しいのだろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。