きょとんとして二宮先輩を振り向く。
二宮先輩はいつの間にか私から離れていて、声を殺して爆笑していた。
「高崎、お前顔すげぇ真っ赤だぞ!どんだけ男慣れしてねぇんだよ……くくっ」
「……え」
確かに顔めっちゃ熱いけど……え、誰のせいだと……。
「悪い悪い、からかいすぎた。そんなに赤くなると思わなくて……可愛いな、うん可愛い」
ポンポンと私の頭をあやすように優しく叩く先輩。それも、愛しいものにだけ向けるような甘い微笑みで。
当然、私の顔は更に赤くなった。
「……わっ、わざとだったんですか!?」
「逆に素でやってたと思ってたのか?わざとだよ。俺天然じゃねぇし」
――ッそうですかそうですよね!!
私はなんとなくドキドキして損したような気分になり、ハァー……とため息をついた。
「ん?もっかいしてほしい?」
「しなくていいです!」
「残念。んじゃ続きな」
切り替えが早いらしい先輩は、次の瞬間には真面目な顔つきで私のシュートフォームを観察し、ダメなところを徹底的に直していってくれた。
さすが男子バスケ部のエースなだけあって、アドバイスは的確だし、教え方も上手かった。
ただ、時々、
「今の、悪い癖が出てたぞ。さっき言っただろ。気をつけろ」
「マジですか……はい」
「うっそ。ちゃんとできてたから安心していいぞ」
「は!?もう、なんなんですかー!」
「くっ、ははは」
こんな風にからかわれたけど。
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3話の「指導開始」が「始動開始」と変換ミスをしていましたので修正しました。
すみませんm(_ _)m
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!