居残り練習は、部活が終わる7:00から一時間のみ行える。
ちなみに今は7時半くらい。この時間になると、涼しくなってきて練習しやすい、けど……。
「あの、先輩!そろそろ離れてもらって大丈夫ですから!」
先輩が昨日と同じようにくっついてきているせいで、体温が上がりまくってものすごく暑かった。
マジ、なんで!?昨日はあの最初の十数分だけだったのに今日は倍以上に長いよ!?
「平常心だ平常心。これは“練習”なんだぞ、集中しろ」
「またからかってるんですか?」
つい言ってしまった。
二宮先輩の声が少し低くなる。
「は?ちゃんと教えてるよ。現にさっきから連続でシュート入ってるだろ」
「……本当だ」
「気付いてなかったのかよ」
先輩の押し殺した笑い声がすぐそこで響く。
私は疑ってしまったことを反省した。
「……すみません、生意気でした」
「気にすんな。よし、今から俺なしでシュートしてみろ。10本中8本入れられたらオッケー」
「はい!」
「入れられなかったら罰ゲームな」
罰ゲーム……?
何だろうと考えていれば、先輩は笑顔で言い放った。
「第1回考査の順位を教室で叫ぶ」
――高崎光は3000のダメージをくらった。
第1回考査の順位、って……。私、中学とは比べ物にならないくらい悪かったんだけど。それを教室で叫ばせる気ですか?
「絶対やだ……」
「それなら入れろ。真剣に打ったら必ず入るから。もし5本切ったら俺の教室で叫べよ」
二宮先輩の教室。すなわち、2年3組。
もし5本以上外したら、全く知らない先輩達の前で、私は……。
「入れます。」
私の闘志がゴオッと熱く燃え上がった。
先輩はうん、と頷いてエールを送ってくれた。
「頑張れ」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。