第17話

大胆な
1,609
2018/06/18 11:50
鋭い声が響き渡った。

日々の練習で培われた、廊下の隅々まで通る声。

私はその声を知っていた。聞き間違えるわけがない。

「……二宮先輩?」

はっ、と至近距離で息を呑む音がした。

なんとなくざわついている多くの気配と、戸惑いや好奇が混ざった視線。その両方を感じる。

私は先輩に何をされているのだろう。というか、今どういう状況?

「……河野」

先輩が静かなトーンで河野くんを呼んだ。

「は、はい」

「多分お前と高崎は付き合ってるんだろうが――悪い、やれねぇ。俺もこいつが好きだ」

!?!?

誰かがキャーッと黄色い声を上げた。それを皮切りに辺りは一斉に騒がしくなり、離れた所から人が集まってくるような足音も聞こえた。

ま、待って、なになにこの展開!?てかようやく分かった、私先輩に抱きしめられてる!?

「せっ、先輩!一旦離してください!落ち着かせてくださ……」

「無理。よかったな、明日から有名人だぞ」

「嬉しくないです!!ちゃっかり話すり替えないでください!」

「ははは」

いつも通りに先輩は笑っている。こんなに見られててよく普通でいられますね……。

先輩のペースに影響され、だんだん冷静になってきた。ふと、さっき聞いた言葉を思い出す。

「先輩、私、河野くんと付き合ってないですよ。友達になりました」

「……はぁ?」

「そうっす先輩。オレ振られましたよ」

河野くんが苦笑しているような声色で言う。

ただでさえ辛いことを、本人に口にさせてしまったのが本当に申し訳なかった。

「……ならさっき、手を伸ばしてたのは?」

「あぁ、あれは高崎さんの頭についた屑(くず)を取ろうとして。下心がなかったと言ったら嘘になりますけどね。すみません、振られたばっかなんで許してください」

包み隠さず話したのは河野くんの誠意だと思う。だからといって、こうも自分への好意をあらわにされれば、照れずにはいられない。

私なんかを好きになってくれて……。すごいありがたいなぁ……。

「――わっ!?」

急に視界が晴れたと思ったら、右の手首を先輩に掴まれてぐいっと引っ張られた。

そのままスタスタとどこかへ歩いていく先輩。私は連れられる形で先輩のあとをついていく。

ちょっ、今度はなんですか……!?

「お幸せに」

河野くんの横を通り過ぎる一瞬、小さな祝福が耳に届いた。

私は振り返って河野くんに笑顔を見せた。

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