廊下の端の階段から現れた治さんの言葉に、
角名さんが、眉をひそめながら、目を細めた。
角名さんは、ため息をつきながら、肩を落とし、私の方に目を向けた。
角名さんはそう言ったあと、治さんと一緒に、体育館の方へ行ってしまった。
角名さん達と別れたあと、
少し小走りに、部屋に向かっていると、廊下の先、前方に2人の人影が見えた。
あのジャージは、多分、井闥山。
少し目を伏せて、顔を隠しながら、2人の横を通り過ぎようとすると、
ふいに、声をかけられた。
まさか、話しかけられるとは思っていなかったため、少しびくりと反応する。
袖で口元を隠しながら、眉をひそめて顔を上げると、この前の美青年の姿が目に入った。
美青年の言葉に、少し驚きながら、軽く笑う。
私がそう言うと、美青年の隣にいた男の子が、明るく声を上げた。
男の子の言葉に、頷きながら声をもらす。
すると、男の子は可愛らしく笑いながら、美青年の方を指さした。
そういえば、この美青年も、今はマスクをつけている。
なんだ?…試合の時外すってことは、キレイ好きか?
そう思っていると、なにかに気づいた美青年が声を上げた。
マスクのことは、触れずに流してほしかった…
そう思いながらも、突然の問いかけに答える。
言葉を詰まらせながらそう言うと、美青年は少し考えたあと、口を開いた。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!