第12話

月が沈んで、太陽が昇る頃にはまたきっと。
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2021/09/23 03:38
「まってまた憂太ボコボコにされてんの?」

「ちょっとあなたちゃん!笑わないでよ!!」

「ほら、あなたも来い」

「えー…やだよ。体術じゃ敵いっこないの1番わかってんじゃん…」

「私とじゃない。憂太とだ」

「……………………………え?」

「とんだあほ面だな」

「しゃけ」

「だな」

「__1人と1匹…こっち来いよ。まとめてやってやんよ」

「え?あなたちゃん?」

「…あ゙っ」

「素が出たな」

「しゃけ」

「出たな」

「もおおおおお!!!!なんでこういう所ばっか憂太に見られんの!!?真希なんか仕組んでない?!!」

「ばぁか」


この人絶対仕組んだな!!!!!!!

いや、確かに思い返してみればあからさまに憂太のこと目で追ってたし、そりゃ気づくかもだけどそこは密かに応援しろよッ!!!!!!


「あたしら飲み物買ってくるわ。あなた何飲む?」

「あー、水でいいや」

「憂太は?」

「僕も水で大丈夫!」

「なあ真希俺ジュースがいいー」

「お前らは荷物持ちだ」

「…いくらぁ」  ※意味 : そんな馬鹿な

「ちぇっ。」
うーん、かなり自然な流れで2人の空間作ったねぇ〜〜~~~??????

真希、恐るべし。←

素直に伝えた方が、私も諦められるかもな。


「こんな話するもんじゃないけどさ、」

「ん?」

「今も里香ちゃんのこと好き?」

「それは…うん、好きだよ。」

「……そっかあ。一途でいいね。」

「…僕は一途なんかじゃないよ」

「え?」

「少し、寄り道したよ」

「寄り…道、」

「僕も男だから当然、一般男子高校生みたいな会話もするし、好きな子だって出来る。でも今は、里香ちゃんじゃないよ」

「まって。真希なの??まさか真希なのか???」

「最後まで話聞いてよ笑」

「あ、はい」

「確かに里香ちゃんのことは好きだったよ。でもそれは、僕が小さい時の話であって今は色んなものに触れて、色んな人に出会って、考え方も、好みも変わった。…誰かに抱きしめてもらいたい時に、あなたちゃんが抱きしめてくれた。」

「…私、ばかだからさ、自惚れちゃうからその気がないならそんな話しない方がいいよ。せっかく人が綺麗に忘れようてしてんだからさ」

「忘れさせないよ。忘れさせてたまるもんか」

「……里香ちゃんが隣にずっと居るのが羨ましかった。何か力を貸そうとしても里香ちゃんがいるから大丈夫だって思って、自分なんか隣には立てないって思った。でも、憂太がいいって、言ってくれるなら私は、憂太の隣に立ちたい…!里香ちゃんより、強くなんてないし、支えになれるかも分からない、けど、!」


この涙に含まれる感情は、きっとひとつじゃない。

簡単なものにまとめられるほど、楽になんて生きてきてないし、何もしてない。

けど、この涙があなたの腕の中で流せたなら、その時の涙の名前はきっと、嬉し涙。


「僕の隣に立ってくれる?」

「…当たり前」

「心強いなあ」

「わたしもだよ」


里香ちゃん。あなたの代わりになんてなれないけど、自分なりに、彼の隣に立ってもいいかな?

君が怒らないといいんだけど、笑

ようやく動き出す私の道。

その道は一人なんかじゃなくて、いくつもの影が自分の隣には並んでいる。

月が沈んで、太陽が昇る頃にはまた、君が笑っていてくれるなら。

それだけで幸せだと思うから。

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