恭平「寝る?」
あなた「うん、」
恭平「疲れたもんな。」
わたしはソファーに寝転んだ。
恭平「ベッド使いや」
あなた「恭平使って、ベッドは。」
恭平「あかん。あなたがベッド。」
恭平はわたしの身体を抱き上げ、
ベッドに運んだ。
あなた「いいのに、ほんま、」
恭平「よくない。」
…あれ、なんか、
身体重くなってきた。
…最近、
あかんな。
わたしこの仕事やっぱ向いてないかも。
長期の撮影が、
負担すぎる、
恭平「…しんどいよな、」
あなた「恭平、」
わたしは、
身体を起こし、
恭平をじっと見つめた。
恭平「どうしたん…?」
あなた「わたし、辞めようかな。この仕事。」
恭平「…あなたがもう続けるのしんどいんやったら、そうしたらいいと思う。無理に続けさせる理由はないし。でも、」
恭平は、
少しの間黙り込んだ。
あなた「…恭平、?」
恭平「俺は、…あなたの演技、好きやで。」
…すごいな、
あなた「しゅんとおんなじこと言うんやね。」
恭平「…同じやったら、俺やあかんの?」
あなた「え?」
それって、
どういうこと…
恭平「みっちーと、より戻したやろ」
あなた「聞いたん?」
恭平「2人見てたらわかる。…もう、今更遅いってわかってる。けど、」
…まさか、
いや、そんなこと、
恭平「俺やっぱり、あなたのそばおりたいねん。」
…っ、
恭平「俺はっ… あなたのことが、ずっと前から好きや。」
嘘、やろ、
なんで、?
恭平「みっちーと会うよりずっと前から、俺はあなたが好きやったし、…ずっとずっと、そばにおったのに、なんで、」
…わたし、
恭平のこと、
そういうふうに見たことは、なかったかもしれない。
あなた「…恭平は、家族、みたいな存在で。だから、その、」
恭平「恋愛対象やなかった?」
わたしは、
小さく頷いた。
あなた「ごめんなsっ…!?」
恭平は、
わたしの口を塞ぐように、
強引にキスをした。
びっくりして、動けなかった。
キスは、どんどん、深くなっていく。
ダメ、これ以上は、
あなた「きょ、…ンッ、…きょうへ、…っ、」
わたしは、
恭平の身体を遠ざけるように、
腕を、ぐっと押し出した。
恭平は、
我に帰ったように、
目を見開いて、わたしを見た。
恭平「ごめんっ、俺、…ほんまごめん。怖かったよな、ほんまに、ほんまにごめん。…っ、、俺、なんでこんな、」
あなた「…ううん、怖くなんてないよ、大丈夫。」
恭平「大丈夫やないやろ… 襲うようなまねされて、…大丈夫なわけない。ほんまに…ごめんじゃ済まへんけど、…ほんまに悪いと思ってる。ごめん。ちょっと、おかしかったわ、俺、」
あなた「ほんまに大丈夫。…謝るのは、わたしの方やから。思わせぶりやったよね、ずっと。ごめんね。」
恭平「あなたは悪くない。…もう、絶対せえへんから、…やから、」
わたしは、
恭平の手をぎゅっと握った。
あなた「恭平には、ほんまに感謝してるよ。ありがとう、いつも。」
恭平「っ…」
あなた「…寝るね。」
わたしは横になり、
壁の方を向いた。
…気まずく、なっちゃうよね、これから。
変わりたくないよ、今までと。
今日のことは、全部無かったことにして、
ずっと、
今まで通りに…
なんて、
わがまますぎるよね。
…わたし、
酷い人やな。
恭平は特別。そんなこと、側から見たら関係ない。
しゅんと付き合ってるのに、
こんなに恭平にも頼って、家にまで招いて、
ただのたらしやん…
しゅんも、
もし今日のこと知ったりしたら、
優しいから口には出さへんやろうけど、
きっと、なんやねんこの女って思う。
もう、
恭平に頼って生きていくのは辞めなくちゃ。
そうやないと、
恭平にも、しゅんにも、失礼やんな…
次の日、恭平は朝一で帰っていった。
その背中は、
いつもより、弱々しく見えた。
…ごめんね。恭平。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!