第59話

59.
747
2022/02/22 22:03



駿佑「あなた、あなた、」
あなた「ん、、」
駿佑「もうすぐ着くで。」


あなたは、

俺の肩にもたれかかったまま離れなかった。




駿佑「まだ眠い?」


あなたは、

俺の手をぎゅっと握った。
帰りたくないよな、




別れるギリギリまで、

あなたはぴったり俺にくっついていた。





駿佑「じゃあ、…また、連絡するな」
あなた「うん、」


あなたをぎゅっと抱きしめ、

頭をそっと撫でた。


…離れたくないよ、俺も。





あなた「またね、」
駿佑「うん、」
あなた「…やっぱりあと5分だけ、…いや、1分でもいい、」
駿佑「っ、// 何分でも、一緒にいるで、」
あなた「そんなん言われたら一生帰れないよ」



身体に少し、

振動が伝わってきた。





駿佑「あなた、電話鳴ってるんちゃう、?」
あなた「…なんやろ、」


身体が離れ、


あなたは、ポケットからスマホを取り出した。




あなた「…っ、」


あなたの顔が曇った。

どうしたんやろ、





あなた「もしもし… あ、うん、今から帰る。…え、…でも、……え、?あっ、」




切れた?
家かな、





駿佑「お母さん?」
あなた「…うん、」
駿佑「遅くなっちゃったもんな、ごめんな、」
あなた「ちがう、…そうやなくて、…帰ってこないでって、」
駿佑「え?」
あなた「なんか、…住むから、もう帰ってこないでって、」


どう言うこと?

ずっと?


駿佑「なんで急に、」
あなた「勝手すぎやんな、…わたしが全部、お金出してるのに、」
駿佑「…今日うち来る?」
あなた「え、?いや、ホテル泊まるよ、」
駿佑「でも、いまから探すん疲れるやろ。」


荷物も多いし、

泊まりだいぶ長かったし…





あなた「急に悪いよ、」
駿佑「いいよ遠慮せんくて。」
あなた「お母さん、知ってるん?わたしとのこと、」
駿佑「…知らんけど、」
あなた「じゃあ尚更、」
駿佑「大丈夫やから、ほんまに。ちょっと連絡だけしちゃうわ。」
あなた「本気、?」



あなたは心配そうな顔で、

俺をじっと見ていた。



なんとなく、今あなたを1人にはしたくなかった。





電話が切れたときの、

寂しそうな目が、

脳裏に焼き付いて離れない。





あなたはあんま、

お母さんのことよく思ってないみたいやけど、


それでも、

親から帰ってくるなって言われるのは、

拒絶されるのは、


辛いに決まってる。








駿佑「一緒におらなあかんねん、今。」


俺はぎゅっとあなたの手を握った。


小さく震える細い指に、


少し胸が、苦しくなった。





プリ小説オーディオドラマ