駿佑「あなた、あなた、」
あなた「ん、、」
駿佑「もうすぐ着くで。」
あなたは、
俺の肩にもたれかかったまま離れなかった。
駿佑「まだ眠い?」
あなたは、
俺の手をぎゅっと握った。
帰りたくないよな、
別れるギリギリまで、
あなたはぴったり俺にくっついていた。
駿佑「じゃあ、…また、連絡するな」
あなた「うん、」
あなたをぎゅっと抱きしめ、
頭をそっと撫でた。
…離れたくないよ、俺も。
あなた「またね、」
駿佑「うん、」
あなた「…やっぱりあと5分だけ、…いや、1分でもいい、」
駿佑「っ、// 何分でも、一緒にいるで、」
あなた「そんなん言われたら一生帰れないよ」
身体に少し、
振動が伝わってきた。
駿佑「あなた、電話鳴ってるんちゃう、?」
あなた「…なんやろ、」
身体が離れ、
あなたは、ポケットからスマホを取り出した。
あなた「…っ、」
あなたの顔が曇った。
どうしたんやろ、
あなた「もしもし… あ、うん、今から帰る。…え、…でも、……え、?あっ、」
切れた?
家かな、
駿佑「お母さん?」
あなた「…うん、」
駿佑「遅くなっちゃったもんな、ごめんな、」
あなた「ちがう、…そうやなくて、…帰ってこないでって、」
駿佑「え?」
あなた「なんか、…住むから、もう帰ってこないでって、」
どう言うこと?
ずっと?
駿佑「なんで急に、」
あなた「勝手すぎやんな、…わたしが全部、お金出してるのに、」
駿佑「…今日うち来る?」
あなた「え、?いや、ホテル泊まるよ、」
駿佑「でも、いまから探すん疲れるやろ。」
荷物も多いし、
泊まりだいぶ長かったし…
あなた「急に悪いよ、」
駿佑「いいよ遠慮せんくて。」
あなた「お母さん、知ってるん?わたしとのこと、」
駿佑「…知らんけど、」
あなた「じゃあ尚更、」
駿佑「大丈夫やから、ほんまに。ちょっと連絡だけしちゃうわ。」
あなた「本気、?」
あなたは心配そうな顔で、
俺をじっと見ていた。
なんとなく、今あなたを1人にはしたくなかった。
電話が切れたときの、
寂しそうな目が、
脳裏に焼き付いて離れない。
あなたはあんま、
お母さんのことよく思ってないみたいやけど、
それでも、
親から帰ってくるなって言われるのは、
拒絶されるのは、
辛いに決まってる。
駿佑「一緒におらなあかんねん、今。」
俺はぎゅっとあなたの手を握った。
小さく震える細い指に、
少し胸が、苦しくなった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。