駿佑「寝た、?」
あなた「…、、」
寝ちゃったか。
あなたは、何かに怯えている子どもみたいに、
俺の胸にぎゅっとしがみついて眠っていた。
顔は、少しこわばってるように見えた。
駿佑「大丈夫やで…」
俺はそっと、
あなたの頬を撫でた。
あなた「…ごめん、なさい…、」
駿佑「え?」
あなた「…、」
寝言、?
ごめんなさいって、
何にやろ。
その言葉が、
気になって、ぜんぜん寝れんくて。
恭平が言ってた、
"いろいろ"と、
なんか関係あるんかな。
どうしても気になって、
俺は恭平に電話した。
恭平 " なに?こんな時間に。 "
駿佑「ごめん。…ちゃんと、知りたくて。あなたに何があったんか。」
恭平 " …また、一緒におるん? "
駿佑「おるよ、あなた帰りの車で寝て、起きへんかったから、部屋連れてきた。」
しばらくの沈黙のあと、
恭平は、話し始めた。
恭平 " 話すで。…あなた、もともと嫌がらせ受けててん。同じグループやった人に。…あなた、一番人気やったからさ、妬まれてたっていうか、"
え?
そんなん、初めて聞いた。
恭平 " その人、ジャニーズ好きやってんて。で、あなたがたまたまみっちーとLINEしとるとき、スマホ見られて…嫉妬したんやろうな。どんどんやることエスカレートしてって、付き合ってるんがバレたわけではなかったんやろうけど "
駿佑「え…」
恭平 " たぶんやけど、その人と繋がっとった男に頼んでストーカーさせたり、変な手紙送り付けさせたり。あと、ライブ中、足刃物で切られてん。 "
嘘やろ…?
信じられへんくて、
言葉も出なかった。
恭平 " ライブ中断させたくないって、あなた、誰にも言わんと、はけて、タオル巻いて乗り切って帰ってきた。警察いこって言ってんけど、他のメンバー怖がらせちゃうからって。…これからもあったら、迷惑やしって、卒業した。多分、相当辛かったのもあるけど。 "
そんな、…なんで何も言ってくれんかったん?
恭平 " それと、みっちーに言うなって。心配かけたくないからって。…それからちょっとして、別れて。みっちーが1番の支えやったのに。あのライブの日から、外怖くなって、学校も行かれへんくなって。それでも、みっちーとの約束の日だけは、頑張ってたし、会いたいからって、お前のこと話してる時だけは笑顔やった。なのに、"
涙が出た。
そんな思いしてたのに、
そんなこと思ってくれてたのに。
なんも聞かんと、
別れて。
でも意味なかった、
守るために別れたつもりやったけど、
守れてなかった。
俺、なんも気付けへんかった。
…逃げただけやん、
こんなん。
恭平 " 今は大丈夫なったけど、あなたずっと、苦しんでてんで?毎日泣いててんで。みっちーが、逃げたから。1番の支えが無くなったから。…これ聞いても、まだ一緒におれる?"
恭平の言う通りやった。
俺、あなたのことぜんぜんわかってなかった。
自分勝手やった。
やっぱり、
まちがってた。
駿佑「…グズッ、」
恭平 " 泣きたいのはあなたの方やろ。 "
恭平はそういうと、
電話を切ってしまった。
…俺には、
あなたの横にいる資格なんてないんや。
恭平があんな必死な理由もわかるわ。
ごめんな、あなた。
…ごめんなんかじゃ、すまへんよな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。