顔を横に向けて正面を向かないようにして
それ自体を見ないようにするという行動に走る
画面に引き込まれることを理解しているからだろうか
見るという行為すら拒絶してしまっていた
五円玉の穴に糸を通す
少しの動作で必要なものは即席で完成した
プラプラと揺れる五円玉、見てだけで非常に趣があり
言いようのない何かに意識を囚われそうになる
にぱーと笑顔満点でいるの希少だけど
細かいことは何も考えてないようで、眼中にあるのは
私だけでその他に興味を示す姿勢すらないほど
一周まわって恐怖しかない「ううっ…」半泣き状態で
小走りで近寄りなーくんの腕にぎゅっとしがみつく
突然の光景に驚くのも無理はない
私だって大事になる訳ないなんて浅はかな考え持ってた
引き剥がそうとしてくるが思いっきり抵抗してた
甘い声に誘われたら足掻く術も失うし
やっちゃった…と呟く、この子の言葉で血の気が引く
固結びになったようでほどけなくなり
どんどん固くなっていく結び目を相手に険しい表情で
何とか懸命にほどこうと格闘してるが時間がかかりそう
別に迷惑では無いよ、とそんな気軽な気持ちで
発していた弁解の言葉は傷口に塩を塗るのに近かった
顔を顰めて再び不機嫌に早戻りする
名前を呼ばれ振り向いた瞬間
猫なで声だけど、仕草自体は根本的にあの人と既視感
顎を掴むと引き寄せられるとまるで噛み付くみたいに
唇を重ねられた
時間が経てば自然に解ける説が濃厚な気がしてきた
暗示の効きやすさは個人差あるし、人により相当違う
浅い催眠ならぼーっとしてる程度だけど
これの場合、深い睡眠まで誘導してしまった確信がある
唇を離す頃を狙っていたようで
サッと先程の絡まってたはずの紐に通されてる五円玉を
彼の顔の前でぷらぷらと揺らしていた
完全にくたってしまい、腕を持ったままへたり込んだ
とんでもない発言かましてきた