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第8話

貴方を愛して生きる地獄
    今日も、俺は海の元にいつも通り通う。毎日、会っても毎日違う新鮮な驚きがある。こんなこと、本当に初めてだ。
海?俺だけど、いる?
    返事がない。いつもなら、嬉しそうに飛び出てきてくれるはずのんだが。



ガシャンッ



    部屋の奥から激しい音がした。
海!?どうしたんだ!?
    扉に鍵は掛かっていない。俺は、家の中に入る。
海!
う、はぁ、はぁ、
どうしたの!?ねえ、海!
    海が床に倒れて胸を押さえて苦しんでいる。額に、汗を浮かべて。
    俺は、海に駆け寄り体を抱き起す。
み、なと……ごめんなさい、ごめんなさい
海?どういうこと!どうしたんだよ!
    海が胸元の辺りを苦しそうに掻く。
海、ごめん!ちょっと、見せて!
    俺は、海のブラウスのボタンを3つ開けた。海の白い胸元に、青い鱗の模様の様な刺青が浮き上がっていた。
こ、これって!なんだよ、これ!
これね、呪いの証し……私ね、
    海が冷たい手で俺の頬を触る。
私ね、湊のこと好きになっちゃったみたいなの……ごめんね。でも、安心して。私は、湊を殺さないから
    海が力無く笑う。  頭の血が一気に下がっていく。
でも、このままだと海が、
くっ、あ、
    海の体を見ると、刺青はあらゆるところから浮かび上がってくる。足の先から、指の先。
ご、めん、なさい
    海が俺の腕の中で、目を閉じた。
海!海!


どうして、こんなことに……
湊……
    ベットの上の海が目を覚ます。
海、ごめん。俺、もう海に会えない
起きてすぐに、そんな悲しいことは聞きたくない
でも、俺……海のこと嫌いだから
    分かっている。こんな嘘を吐いても、もう遅いかもしれない。でも、少しでも可能性があるなら言わずにはいられなかった。
嘘でしょ?
嘘じゃない
嘘。嫌いだったら、そんな泣きそうな顔をしてないでしょ?
そんなこと、
    海が俺の髪に優しく触れる。
湊、聞いてくれる?
    気を抜いたら涙が溢れそうだ。絶対に、海に泣いているところなんて見せたくない。
湊……私、貴方のことが好き
    だめだ。そんなこと言ったらダメだ……
だから、ごめんなさい。このまま、貴方を好きなまま死なせて
   海の姿が霞んで見えない。
やめてくれ……そんなのやめてくれよ……
ごめんなさい。でも、嫌なの。お願い、私が泡になってしまうまでの間……恋人になって
やめろよ。最後なんて言わないでくれよ!
    涙が止まらない。拭っても、拭っても、止められない。
    優しい花の香りがする。俺は、海の胸に抱き締められている。海の小さな体が俺を必死に強く抱き締めてくれる。
お願い。もう、嫌なの
    俺を抱き締める腕が震えている。
貴方がいない天国より、貴方を愛して堕ちる地獄の方がいい。私は、もう愛することから逃げたくない
海は……強いよ
湊……そんなことないよ私……
    俺を抱き締める海の腕に力が入る。
弱いよ。だって私、湊のこと直ぐに好きになっちゃったんだから……
    海の声が震えている。
    俺は顔を上げて、海の顔を見る。
    静かに海の頬を涙が流れていく。
    俺は、涙で濡れた海の頬に触れる。驚くほどに冷たい。
海、好きだ。俺の恋人になってくれますか?
    最低だ、俺。
はい。よろしくお願いします
    泣き笑いのように表情の海。
最期まで、しっかりと愛してね
    俺は、ゆっくりと海の唇にキスをした。
     この先に待っているのは、地獄でしかない。俺は、彼女を殺してしまうんだ。でも、きっと海は許してくれてしまうのだろう。