“人虎は生け捕り?
あんた達は一体_________。”
“元より僕の目的は貴様一人なのだ。人虎”
“そこに転がるお仲間は、いわば貴様の巻き添え”
“!……僕のせいでみんなが?”
“然り。それが貴様の業だ。人虎
貴様は生きているだけで周囲の人間を損なう”
“………僕の…業…”
“異能力、羅生門”
”別_怒__いる_じゃない
__、_とは____があ__だ
あ__痛___るのは____る”
”__言え、これ___る私__情で
__と___係だ
私が____言う筋__は無い”
微かに脳に残った
聞き覚えのある、綺麗で、心が落ち着く声
貴方はもしかしてあの時の___________
探偵社のベッドで眠っていた敦が目を覚ます。
傍らの椅子に国木田が腰掛けている。
眼鏡を頭に跳ね上げ、裸眼で手帳を見ている。
敦は上半身を起こす
芥川の羅生門によって
右足を切り落とされた事を思い出す敦。
壁越しに聞こえてきた谷崎の叫び声と、
「あ♡」という声に、敦は国木田に問う。
しかし国木田はそれに反応せず
敦を見据える
国木田の発言に驚く敦
“元より僕の目的は、
貴様一人なのだ、人虎。”
動揺し、冷静さを失った敦に、国木田は言い放った。
そんな国木田を見て、敦はあることに気がついた
国木田は逆さになっていた手帳を正しく持ち直し
ゆっくりと椅子から立ち上がると
敦に向かって叫んだ。
敦は思い詰めた表情で、俯く
国木田が医務室を出ようとしたとき、
何かを思い出したかの様に、敦を呼んだ
敦side
少しだけ、脳に残っているあの声。
河川敷で食べ物をくれたあの女性と同じ声だと思う
綺麗で、何処か、心の落ち着く声。
昔何処かで聞いたような_________。
彼女だったとしても、何故あんな袋小路に?
そう考えていると
ポケットに何か、紙が入っている事に気づいた
紙を開くと、手紙のようだった。
内容はこうだ。
“元気か、中島敦くん
あの時は、チョコレートの様な小さの物しか与えられなくてすまなかった。
お詫びと言ってはなんだが、
下に私の電話番号が書いてある。
困った時は何時でも掛けてきてくれ。
葉月あなた。”
確信した。
あの声の主はあなたさんだと。
下に書いてある電話番号。
これに掛けたら何時でもあなたさんと話せる
そう思うと、先程まで沈んでいた気持ちが
少し晴れた気がした。
敦side終了
国木田side
医務室から出て、廊下を歩いていた。
予定の確認をしなければいけない。
なのに、なのに。
あの女が、脳裏に焼き付いて______
気づけば、あの女の事を考えている。
理由なんて、とうに分かっている。
だが、俺はそれを認めるわけにはいかない。
あの女はポートマフィアの女帝。
人を沢山殺している女だ
太宰や乱歩さんが好意を抱いているとしても
俺はあの女を信用しない。
それに、俺に恋人ができるのも、今から4年後だ。←
手帳にそう書いてあるからな。
それなのに、それなのに!!
あの女に……!!!
俺が想いを寄せるなど……!!
あってはならない!!!
国木田は下唇を噛み、手帳を開く。
そして、廊下を歩いて行った。
国木田side終了
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。