「もうそろそろ集合時間かな?」
「うん、そろそろ」
旅館への道を男の子の後ろから歩いていく。
「今日はありがとう」
「そんなお礼なんて……こちらこそ。楽しかったよ」
「私もすごく楽しかった!まるで今日会ったばかりなんて思えないくらい!」
すると、
男の子は急に立ち止まり私の方を振り返った。
男の子の顔は涙は出ていないものの何故だかとても悲しそうに見えた。
「……ど、どうしたの?なんでそんなに泣きそうな顔、」
「…………悲しいからだよ」
「…………え?」
男の子の言葉が私は理解出来なかった。
「僕は今、とても悲しいんだ……でも、嬉しいんだ。とても悲しくてとても嬉しい」
「…………どういうこと?」
「もう、僕のこと忘れちゃった?」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。