夕飯を食べ終えた私は自分の部屋に戻って、さっきの話を思い出していた。
── 丁度4歳の時、京都で迷子になって…。
── それでやっと帰ってきたと思ったら、なんだか随分嬉しそうな顔してて、次の日もまた次の日も早くに出掛けるようになって、
お母さんの話を聞いて、何か自分の中の忘れかけていた記憶が少しだけ戻ってくるような感覚になった。
── 実生にどうしてそんなに嬉しそうな顔をしてるのって聞いたことがあるの。
そしたら……。
『柚に会ったって』
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───────…………
『ねぇ…みい、明日もここで会おうよ。』
『あしたも?』
『うん、僕はずっと…ここにいるから』
君がくれた言葉はこんなにも鮮明に覚えているのに、どうして君の顔も名前も思い出すことが出来ないんだろう……。
私に…君を教えて。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。