次に来たのは、『平等院鳳凰堂』。
10円玉に描かれているあの建物だ。
『はい、皆さんここで止まってください。ここが平等院鳳凰堂です。ここは世界遺産に登録されていて──』
「これが平等院鳳凰堂なのね……教科書で見たくらいで本物を見るのは初めてだわ」
「大きいね……すごい」
隣でなっちゃんとちーちゃんが感嘆の声を漏らす。
「これってお金に描いてあったやつだよな?なんだっけ……100円玉だっけか?」
「ん〜、おしいね。10円玉だね」
「……全然おしくない……優都は春希に甘すぎ」
「なに?大志も僕に甘えたいのかな?」
「…………もういい」
「あはは、大志、拗ねちゃった」
優都にからかわれた大志は不機嫌そうな顔をして向こうに行ってしまった。
「優都もあんまりからかっちゃ可哀想だよ」
「つい、ね?特にからかいがいがあるのは、春希と大志と……実生、かな?」
「……黒い…優都が黒い……それになんで私まで」
「反応がいいからだよ。でも実生に言われちゃったし…これからは気をつけようかな?」
これは……絶対に嘘だ。
そう私の頭が直感で感じていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。