『みい』
私のことをそう呼ぶのはただ1人だけ。
夢の中で私を呼んでいた、君、だけだ。
「君、は…………」
その時、鼻になにか透き通る香りを感じた。
これだった。
それは君の名前だった。
「………………ゆず、だよね?」
夕日に照らされた君の顔が強ばる。
その刹那、
くしゃりと歪んでその瞳からは大粒の涙が溢れ出す。
「……ゆ、ゆず……だよ、君がゆずなんだよ……私、なんで忘れて……」
ゆずの涙を見て自分の瞳からも涙が溢れ出す。
「わた、し……っ、、バカだ……大バカだよ……ごめんな、さい……ごめんなさ──」
その瞬間、
私は暖かいものに包まれた。
それはゆずの体温だった。
ゆずに抱きしめられた私の心臓はあの時とおなじリズムで動き出した。
「ほら、ね?だから言ったでしょ?僕が会いたいって思ってみいも会いたいって思ってたら必ず会えるって。
ほら、また会えた」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。