-クロ 視点-
俺たちの目の前に現れたのは、大きなムカデ。
横だけなら、長さは洞窟の穴の半分以上はありそうだ。
全長までは分からないが、まだ半身が地面に入ってる状態。
相当長いんじゃないか…?
あの普通のムカデよりデカくて、キモイ手足にグロテスクな顔面を可愛いと?
俺は無理だ。
普通のムカデよりキモすぎる。
…普通のムカデあんま見たことないけど。
アクアさんがシールドを展開した瞬間、ムカデが思いっきりシールドに体当たりする。
間一髪…
ムカデはシールドを破壊できず、そのままぐるりと首を曲げて地中に潜って行った。
しかし、とても長い身体は完全には隠れきれていない。
だが、足元はムカデが現れる前のように揺れ、どこから来るかも予測できない。
万が一、攻撃されても俺は緊急回避できるだろうが、他はお陀仏になるはず…
どうやって対象するべきだ?
さぎさんはブツブツと独り言を詠唱している。
必死に考えているみたいだけど、あんま考える時間もないだろう。
とはいえ、俺は頭の良い方じゃない。
ムカデが隙を見せたら、とにかく攻撃して体力を削るか。
この不安定な足場でヒットするかは分からないけど。
確かに、お嬢が洞窟を殴り壊したらムカデも倒せそうだ。
死ねば何も残らないし、せっかくの異世界も楽しめない。
正直、洞窟壊す方が俺的にはワクワクするし。
けどさぎさんの言う通り、洞窟を壊せばサブクエみたいなのはクリアできない。
なんかを捨てなきゃ、生きてサブクエをクリアするのは無理なんじゃないか?
足場が安定していない中、見事ムカデのはみ出た身体を真空の刃が斬りつける。
刃が当たったと同時に、ムカデは身体の近くに顔を出し、そのまま上に潜って行った。
おんやぁ…?
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上にムカデはいるのだろうか。
それでも地面は揺れ、まだ安定していない。
そんな中、アンデッドはムカデのはみ出た身体の近くまで難なく到達している。
そして、俺が弓を引き絞った時…
アンデッドがはみ出たムカデの身体を斬りつけ、それに反応したムカデがアンデッドめがけて突進する。
瞬間的に俺はチャージショットを放ち、隣にいた猫さんがサンダーと魔法を唱えた。
魔法と弓矢は直撃するが、ムカデは構わず地中に潜った。
やっぱり、攻撃されたらその方向にめがけて来る。
遠方の攻撃だからムカデの突進なんざ当たりやしない。
そして、この作戦の本当の狙いは…
ムカデが地面から出て、こちらめがけて突進した時、颯爽と目の前に現れた咲夜さんが思いっきりムカデをぶん殴る。
殴られたムカデは、身体があらぬ方向に曲がり、その場でバタンとひっくり返った。
…あれ?
アクアさんがハッとムカデの方に振り向いたのを見て、察した俺はすぐさま弓を引き絞った。
放たれた弓矢は綺麗にムカデの脳天を撃ち抜く。
ムカデはよろめき、そのまま黒い粒子となって消えた。
俺はムカデがドロップしたアイテムを指さした。
なぜアイテムを指さしたのか?
理由は、ドロップしたものが…
明らかにムカデのものではない…何かの鱗だったからだ。
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つづく…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。