第5話

ファンタジーの日常 -3 【初戦】
46
2022/09/02 06:01
-狭霧 視点-
蝶々の行った先を進んで行く私とクロさん。
おそらく、行った先は狼たちの集う場所。
間違いなく戦闘せねばならん。

木々をかき分け、やっと森を抜けたと思ったら…
狭霧
狭霧
あらー…
狭霧
狭霧
なんかいっぱいいるなぁ〜
案の定、かき分けた先は狼のたむろう場所だった。
後ろにいたクロさんも察し、草木に姿を隠して狼たちの様子を伺う。
クロ
クロ
めっちゃいんね…
狭霧
狭霧
うん…ここに何があるんだろう
確かに蝶々はここに向かった。
しかし、わざわざこんな危険な場所に導いてどうするのか。
要するにキーアイテムみたいなのがあるんだろうけど…
カミサマ
カミサマ
やっほー君たち、元気にしてる?
狭霧
狭霧
わっ!
クロ
クロ
うわ!?
クロ
クロ
な、どっから声が…
カミサマ
カミサマ
そりゃあ君たちは吾の付けた証がある
カミサマ
カミサマ
それを通じて話しかけているのさ〜
狭霧
狭霧
なるほど…
うっ、こいつ、脳内に直接…!?
ってわけじゃないみたい。
実際脳に声を送ってるんだろうけど、細かいことはこの際無し!

にしても、カミサマは一体なんのために話しかけてきたんだ?
カミサマ
カミサマ
ん、なんのために、ね…
狭霧
狭霧
読めるんか…
カミサマ
カミサマ
まあ一心同体と変わらないから
おぉ、怖い怖い…
カミサマ
カミサマ
君たちはこの世界の転移者だ
カミサマ
カミサマ
住民たちとは違う仕組みがある
狭霧
狭霧
違う仕組み?
カミサマ
カミサマ
そう。難しいことはないよ
カミサマ
カミサマ
ゲームと同じ
カミサマ
カミサマ
さあ、証を触って
カミサマ
カミサマ
力を求めよ
言われた通り、私は証の着いた手の甲に指を置き、力が欲しい…そう求めた。
すると証からホログラム的なものが飛び出、目の前に何かの情報が映し出される。
これは…ステータス?
カミサマ
カミサマ
ご名答、今君たちが見てるのはステータス画面
カミサマ
カミサマ
そこにはあらゆる情報が記載されている
クロ
クロ
へぇ〜…あ、すげえ!自由に色んな項目見れる!
狭霧
狭霧
えっ、ホントだ
カミサマ
カミサマ
その情報はあくまで君たちの脳内にあるものだ
カミサマ
カミサマ
それを吾が可視化させて、やりやすくしたのさ
狭霧
狭霧
ほへぇ…
カミサマって、本当になんでも出来るんやな…

カミサマのいうステータス画面からは、自分の職業、能力値、スキル、持ち物など、あらゆる状態を確認できるようになっていた。
それを順番に見ていく。
まず、職業は言われた通り、カーディナルウィッチ。
白魔法術士らしく、回復はもちろん、範囲攻撃魔法も使えるみたいだ。

能力値は…比較する対象がいないから分からないが、魔法力が他の数字より高めってことは分かる。
耐久力は無さそうだ。

スキルの欄を見てみると、初期的な回復魔法や範囲魔法が載ってあった。
最初だからか、あまり威力はないみたいだけど、カミサマに願ったMP減少無しが働いてるのだとしたら、まず問題はないだろう。
ざっと見ていった中で、私は一つ疑問を持った。
狭霧
狭霧
あれ?レベルって無いんですね
カミサマ
カミサマ
あるにはある
カミサマ
カミサマ
調査系スキルを持っていればそれも分かるし、体感でレベルアップが分かるだろう
カミサマ
カミサマ
それに、戦えば戦うほど使えるスキルが増える
カミサマ
カミサマ
能力値に関しては、装備品でもある程度決まる
クロ
クロ
ふーん…
カミサマ
カミサマ
じゃ、あとは頑張ってね
カミサマ
カミサマ
必要な時、また話しかけるから
そうカミサマが言うと、ピロンと音がしてなんとなく通信が切れたのだと察する。
これが異世界の携帯電話というやつか…

そんなことはさておき、問題はここから。
狭霧
狭霧
…クロさん、狼、殺りますか?
クロ
クロ
あー、うん…ちょっと待って
クロ
クロ
ねえさぎさん、さぎさんの職業は?
狭霧
狭霧
ん?私の職業はカーディナルウィッチ…いわゆる白魔法士かな?
クロ
クロ
あ、へぇ!なんか意外
狭霧
狭霧
え、そうなんか…
狭霧
狭霧
ちなみに、クロさんは?
クロ
クロ
ダークアーチャー
クロ
クロ
闇魔法とか使える系のアーチャーみたい
狭霧
狭霧
なんか強そう
クロ
クロ
ねー
クロ
クロ
スキルは最初だから弱いけど、なかなか面白いのあるよ
狭霧
狭霧
なになに!
クロ
クロ
『影移動』、物や人の影に入り込み、移動することかできる、だって
狭霧
狭霧
うわーそれ絶対アサシン系のスキルぅ
クロ
クロ
んだねw
クロ
クロ
けど、これ結構使えそう
狭霧
狭霧
試してみる?
クロ
クロ
えっ?
狭霧
狭霧
ほら、目の前にカモが…
クロ
クロ
あー…殺りますか( ◜ ▿ ◝ )
狭霧
狭霧
よし、殺ろう(^ω^)
殺る準備が整ったその時、手元に武器らしき杖が現れた。
狭霧
狭霧
おっとと…杖?
クロ
クロ
これ弓…?
クロさんの方に目をやると、その手にはしっかりと弓が握られていた。
しかも背中にちゃんと矢筒がある。

どうやら、戦闘意思がある時には、勝手に武器が手元に現れる仕組みのようだ。
ハイテクぅ〜!
狭霧
狭霧
んじゃ、改めて…
狭霧
狭霧
デュエルスタンバイ!!
クロ
クロ
そっち!?w
----------------
クロ
クロ
ヘッショ!(☝ ˘ω˘)☝ふぅー!!
狭霧
狭霧
WOW
攻撃しに来た狼を見事に撃ち抜いていくクロさん。
私もそれなりに応戦しているが、殺傷力はクロさんの方が上。
というわけで、私はクロさんの攻撃のアシストをしている。

不可思議にも、クロさんの撃った矢で死んだ狼は黒い粒子となって消滅している。
おそらく、私が狼を殺しても同じ現象が起きるだろう。
そしてもう一つ気になったのが、クロさんの矢がいくら撃っても無くならないことだ。
どうやら、矢は撃っても無限に湧く仕様みたい。
狭霧
狭霧
っと、懲りない狼だな…
クロさんが一匹ずつ駆除していく隙をつくように、殺られた狼の背後からもう一匹突進してきた。
狭霧
狭霧
フラッシュ!
突進してきた狼目掛け、目くらましの魔法を放つ。
狼の動きが止まったところで、弓矢が狼の頭を射抜く。
さすがのエイム力。
この世界でもFPSで鍛えられたエイム力は健在のようだ。
クロ
クロ
OK!殺ったよ
狭霧
狭霧
ないす!
狭霧
狭霧
残るはあそこのデカブツ…
クロ
クロ
見るからにボスだね
狭霧
狭霧
そうみたい
私たちと少し距離を置いたところで、静観していた図体のデカくて牙がギラついている狼。
あれはおそらく、狼たちのリーダー。
私たちにとってのボスだ。

様子を伺っているようだが、その距離ならクロさんの弓矢射程圏内だろう。
さっきみたいに、上手く目くらましで…
クロ
クロ
…っ!?危ない!
狭霧
狭霧
おわっ!?
クロさんが照準を合わせてる時に、物凄い速さでボス狼が私たちの間を切り抜けていった。
と、言うより、爪で切り裂こうとして避けられた…と言うべきか。
なんにせよ、あの速さは尋常ではない。
狭霧
狭霧
は、はやすぎ
クロ
クロ
あんの速さで来られたら、まともに弓当たんねーよ…
さすがのクロさんでも当てるのは至難の業。
依然として狼は身構えている。
攻撃しようとした隙を狙っているのだろうか。
狼も群れなすほど賢い生き物だ。
そういう知恵は働くのだろう。

知恵には知恵。
どう打開しようか…
私のスキルで何とか出来そうにはない。
じゃあクロさんのスキル…あ。
狭霧
狭霧
クロさん!影移動!
クロ
クロ
え?
狭霧
狭霧
なんとかして私がアイツ引きつけるから、影移動でアイツの裏回って攻撃できる!?
クロ
クロ
…おーけー。できるか分かんないけど、やるしかないでしょ!
覚悟を決めたクロさんは、瞬時に木の影に溶け込んだ。
しかも私じゃ視認できないなこれ。
影となって移動してるんじゃなくて、影にワープできるスキルなんじゃないか?
はー…
狭霧
狭霧
って、感心してる場合じゃないな…
狭霧
狭霧
さ〜狼ちゃん、私が直々に相手するよ
死なない程度に、ね。

あのボス狼もクロさんを視認出来なくなったらしく、ボス狼の目線は私に向く。
次の瞬間、急激にボス狼の殺気が増し、飛びかかろうとこちらに向かって来た。
狭霧
狭霧
のおおぉーー!
それを間一髪、体を回転させて移動することで回避した。
狭霧
狭霧
速いのキツすぎるって!!
これ何回も食らったらさすがにバテる!
むり!バカじゃないの!?
ああでも引き付けんと…

クロさんが攻撃しやすいようにするためには、何が必要?
背後をとった時、気付かれないようにするには…
影にワープするんだったら?
ボス狼の注目を私以外に向けないためには?
そのためには…
狭霧
狭霧
あぁ!こうすれば…
私があることをした時、ボス狼も勘づいてか、すぐさま走ってきてその鋭利な爪を私へ向けた。
が…
狭霧
狭霧
引っかかったなぁ!!
私が投げた魔法フラッシュの凝縮されたボールがボス狼の爪に当たり、見事に炸裂。
私でも目が眩むような閃光がボス狼をひるませる。
クロ
クロ
これでやっと殺せる…
クロ
クロ
はあぁっ!!!
そして、閃光が消えると同時に、私の横スレスレに豪速の弓矢が通り抜けていく。

気が付けば、目の前には頭にどデカい穴のあいたボス狼が倒れ込んでおり、おそらくは弓を撃った後であろうクロさんが凛と立っていた。
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カミサマ
カミサマ
やっほーカミサマだよ〜
カミサマ
カミサマ
あの子たち、なんとか狼戦を乗り越えたみたいだね
カミサマ
カミサマ
初戦にしては上出来だ
カミサマ
カミサマ
褒めてあげたいね
カミサマ
カミサマ
にしても…
カミサマ
カミサマ
あの蝶々、吾も見たことがないものだ
カミサマ
カミサマ
何も仕込んではいないはずなんだけど…
カミサマ
カミサマ
…ふふ、ふふふふふ!
カミサマ
カミサマ
非常に面白いなぁ転移者よ
カミサマ
カミサマ
その調子で、吾を楽しませておくれ
カミサマ
カミサマ
この夢が覚めるまで、ね
つづく…

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